世界の真ん中じゃなくていい、スクランブル交差点とか、屋上とかからじゃなくていい。というか叫ばなくてもいい。ぽつりと愛してるよと言ってくれたらいいんだけど、この間ふと間違えて道に躍り出た私の名前を咄嗟に叫んでくれたときが1番愛だったなぁ。
この人と離れたら困るなと思いながら、この人を楽しませたいと思えない。1年前の今日は復縁していたし2年前の今日は別れる直前だった。別れてからもう一度付き合って、ゆるく人生が決まろうとしている。
同情が追いつかないくらい可哀想になりたい、世界で一番不幸だから今苦しいのは仕方がないと思いながら暖かい布団のなかでスマホをひらく。
あられが降っているのにここから動かず人を待っている。
そうして可哀想なフリをしているんだよな私は。
暖かいところで待って機嫌良く会えばいいのに、この姿を見てほしさに外で待っている。願わくば少しでも優しいと思ってほしい。
「ねぇ私病気でさ。あと1年なのかそれ以上なのかよく分からないけどこのまま君より早く居なくなりそうなんだよね。」
一息で言い切った彼女の唇は少し震えていたが目に涙は見えなかった。
「だからさ、なんかこういう時って別れるみたいな感じになるじゃん。別れて、相手の未来の幸せを守るみたいな。私たち結婚するとかそんな話してこなかったし、まだ半年しか付き合ってないじゃん。一生を誓えるかとかそういうのは重いよなーみたいな。なんかさ、だからやっぱ」
「別れる、、?笑」
矢継ぎ早に話した彼女を見ながら混乱は止まず何も言えない僕はただ立ちつくしていた。たしかに結婚するとかはまだ考えていなかった。好きだし落ちつく、この2点は紛れもない事実だけど40年50年と続くだろうこの先の結婚生活を考えると踏み切れる段階ではなかった。1年くらい付き合ったらぼちぼち…なんて考えてはいたものの唐突のタイムリミット宣告に未だ口は開かない。
そんな僕を見透かして「いや~別れとこうか、あんまり迷惑かけたくないし」と彼女はいいながら少し笑う。
「迷惑じゃないよ」と絞り出した声で僕の気持ちは全て見透かされてしまったのか、「優しいね」と返される。
一言も話せなくなった僕を駅に促し彼女は手を振る。終電、明日も仕事だから乗らないと。「少し考えさせて」とだけ最後に呟いて電車に乗った僕に通知が来る。
勿忘草が写るアイコンに「ありがとう、元気で」と並ぶ言葉。
その後既読はつかずLINEスタンプをいくつ送っても全て持っているの表示。少しほっとした自分が確かにいたことに気付いた。