「一輪の花」
「あの子って高嶺の花よね。」
もっと褒めてほしい。私の花は素晴らしいのだから。
この世界の人々はみんな「花」を持っている。複数の人もいれば、一輪だけの人もいる。勉強の花。スポーツ選手の花。大金持ちの花。
最初はつぼみ。でもその才能が咲くと花も同じように咲く。才能が花開く。
基本的に複数花を持っている人にばかりみんな寄りつく。
残念ながら、私はどの中でも例外で花を持っていない。でも、今は一輪持っている。私はこの花の名前を知らない。でも、名前がないということは名もなき才能。なんだかすごそうじゃぁないか。
私のお友達がくれた一輪の花。その友達はそこまで凄くもない花ばかりだったけれど私にくれたのはありがたい。彼女はこの花の凄さをわかっていない。
私の花は世界一なのだ。
花が腐った。訳がわからず友達に問い詰めた。気づいたんだ。私の周りにいた人々が全員持っていた花は口車の花。乗せられた。一輪の花達は私の性格も共に腐らせたのだ。
………
口車は口先だけの言葉という意味だったはず…。
「夜空を駆ける」
家族がみんな寝静まった夜。誰も起こさないようにそっとドアを閉める。
今日は二月の満月。スノームーンだ。
家の庭に立つとこの時だけ田舎に生まれてきたことを感謝する。電灯もなんにもないから透き通るような夜空がそこには広がっている。風で木に積もった雪が落ちてきているのかな。星が落ちてきているみたい。
星のかけらは私に向かって降ってきて体温を奪ってゆく。マフラーくらいはしても良かったかも。
夜空の中を駆けれたらどんなに素敵なのだろう。気づいたら月の近くに行こうと走り出していた。近くになんて行けないのに。
それでも、今の私の鼓動は身体中を駆け巡っている。
「手紙の行方」
私はよく手紙を出す。友達にも自分宛にも。
自分宛に出す手紙というのはまぁ、いわば日記みたいなもので、楽しかったこともあれば、誰かの愚痴、辛かったこと、考えたことなど様々。
特に精神的にきている日々が続くとよく書く気がする。誰かに相談する行為は基本的に苦手なので紙に気持ちを吐き出す。でもその手紙は基本的に読み返すことはなくて、溜まりすぎたら燃えるごみとなっている。
私のあの気持ちの数々は一体どこへいってしまうんだろう。
「やさしくしないで」
最近ふと友達から貰った過去の手紙やらを見返した。おそらく誕生日の日の手紙なのだろう。そこには
「生まれてきてくれてありがとう!」
と書かれていた。
言われ慣れないやさしい言葉を見て、こんなどうしようもない私にそんな言葉かけるべきじゃ無いと思った。
やさしくしないでよ。そんなんじゃ生きてみたくなるじゃん。
「日陰」
小学生の時、マラソンが多くあったのだけど私はほとんど見学か周りをぶらぶら歩くのみ。事情はちゃんとあったけど多分みんなから見たらサボっているように見えただろうな。
日影で保健室の先生とみんなが走っているのを見ていた。嫌いなはずのマラソンが羨ましく思った。
私の心も多分翳ってた。