視線の先には、誰かのアパート、明るいコンビニ、曇った空。
隣に座ってたけど、見たのは2、3回だけだった。
小説に出てくるような、独り言のような、ぎこちない会話をして、アイスを食べて帰った。
アイスが溶けたらさようならをした。
またね、と言われた。
9月に死んだとする。
死んだぼくは先輩に「学校が再開する月は自殺が多いらしいよ」と言われる。
「いじめが多い学校だったからね」
「家庭環境も良くなかったみたい」
おばさんたちに噂される。
実際は学校に行きたくない訳じゃないし、いじめられてないし、家庭環境もそれなりに良い方だと思う。
でもそれでいい。あることないこと噂されて、本当の理由が隠されるならその方が良い。
いつもより近い飛行機を追いかけながらそう思った。
「んー、右がいいよね」
大学からの帰り道、コンビニに寄った。
僕は左がいいと思った。
「だよね、僕も右」
また合わせてしまった。
店員さんにお金を渡す君の後ろ姿がいとおしかった。
コンビニを出て、君は少し先で跳ねるように歩いている。
右手に君が選んだのり塩味のお菓子とお酒が何本か。
ビニール袋が君に合わせて揺れている。
「じゃあ私、こっちだから」
君は振り向いて右を指す。
「え?ああ、」
甘かった。一緒に選んだのだから、てっきり一緒に食べるものだと思っていた。
「あの、じゃあ、おれ、こっちだから」
僕は左の道を選んだ。
今度は合わせられなかった。
君がほかの友達といたいと言おうが、君が彼氏といたいと言おうが、君が家族に会いたいと言おうが僕は構わない。
僕は君の家の前でだだをこねて君を連れ出す。
そして僕の家に閉じ込めて一緒に映画を見るんだ。
ソファに座って、手を繋いで、二人は途中で買ったジュースとお菓子を食べている。
あの俳優は下手だ、とか、あのシーンは良かった、とかそんなことを言って死にたい。
もし世界に骨が残るならぼくときみは一緒がいい。
僕のありがとうはありがとうではない。投げたゴミが外れた時、イヤホンを家に置いてきた時、洗濯物を干すハンガーが足りなくなった時、僕は最悪とつぶやく。それと同じだ。