勿忘草
『わたしを忘れないで』
………きらいっ!
いや、あぁ、急に汚い言葉を言ってしまって申し訳ない…でも…その……勿忘草の花言葉の『わたしを忘れないで』って…。なんか……気持ち悪くないか…?。
勿忘草が好きな人はほんっとうに申し訳ない。本当に。
多分読まない方がいい。
でも…、なんか…花言葉が女々しいっていうか…。
えぇ〜…。だっ…てぇ……。恋人に渡すとしても相手を信用してない気がするし、親族に渡すとしてもなんか惨めがましい気がする………。……惨めがましいってなんだ…?。なんでこんな嫌だってなるんだろう…なぜ⁇。
他の『誠の愛』だとか『真実の愛』だとか『真実の友情』だとか…う、うさんくせーッ!!。
なんだよ真実の愛って!他のも真実ってつけときゃいいだろって思ってるだろ!うぇーッ!ペッ!。
…あぁ、でもなんかこんなのにうえーっなってる自分が一番惨めな気がする。うああ…。
だって…あばば……。はぁ……。
ブランコ
ブランコに乗って、ブランコの座面をできるだけ地面から離れるように足を立てて、それから一気に離した時のあの感覚。
空がぎゅうんって近くなるような、上下が一瞬わかんなくなるようなあの感覚が好き。
お空に手は届くのかなぁ。
旅路の果てに
酒場の半戸がぎいいという音を立てて男を迎え入れた。
「いらっしゃい」
白い髭を蓄えた庶民服を着た店主がそう言った。
「旅の方かい?」
店主が男に聞く。
「あぁ。店主、キールをくれ」
大きな荷物を背負い、顔がすっぽりと隠れるほどのフードを被った男は静かにそう言った。
男はカウンター席につき荷物を下ろそうとした。とても大きな音が鳴ると思ったが、とても軽い音しか鳴らなかった。
男がフードを外す。
とても澄んだ翠緑の瞳をしているが、傷だらけの顔と大きな体には、とても不似合いである。
「はいどうぞ」
真紅の色をしたキールが男の前に差し出される。
男はそれを少し呑んだ。
「この街にはどれくらい滞在するんだい?」
店主が聞く。
「いや、実はここが旅の終着点なんだ。妹に会いにきてね」
男がそう返す。キールがゆらりと揺れる。
「おお。家族の再会って訳か。それはいいね。家族は大事にすべきだ」
店主は自慢の髭を触りながら歯がピカリと光るような笑みをした。
「そうだね。そう…。ほんとうに」
男は荷物を触りながら言った。
男はグラスに残った酒がなくなるまで、店主と他愛のない会話をした。
男がそろそろ出るかという時に、店主は聞いた。
その箱の中身はなんなんだい?、と。
すると男は翠緑の瞳を揺らめかせて、
「天国への梯子さ」
そう言った。
あなたに届けたい
拝啓、あなたへ。
この手紙をあなたが読んでいるということは、あなたはきっとわたしのことを知らないでしょう。
信じてくれないと思いますが、あなたとわたしは友達だったんですよ?。こう言うと変ですが、前世…みたいなものでしょうか。知らなくていいです。覚えてなくても、無理に思い出さなくてもいいです。ただ、ただ今はあなたに甘えさせてください。
年が明ける直前、2人で一緒にジャンプしたのを覚えていますか?。
あったかいコートと、手袋と、マフラーをつけても外はとても寒くて、あたり一面雪が積もっていて、雪はもう止んでるのに、雪が降ってた時より寒くて、息を吸うと、肺がズキンと痛くなったのを覚えています。
2人で積もった雪の上を歩いて、わたしが一緒に年が明ける直前にジャンプしようと言ったとき、あなたは少し嫌そうな顔をしていたけれど、一緒にジャンプしてくれたのがとても嬉しかった。
その時、私が着地をミスって、あなたに倒れ込んでしまってごめんなさい。あなたを下敷きにしてしまって…。多分…じゃなくて、後日の風邪は確実にわたしのせいです。ごめんなさい。でも、『背中寒すぎる』といって笑ってくれたのがとても嬉しかった。そのあと、あなたに『はやくどけ』と軽く叩かれてしまったけれど、無理に押し返そうとしてこなかったのがとても嬉しかった。とても、とても嬉しかった。
寒さなんか忘れてしまうほどに、暖かくて優しい温度だった。
忘れたくないと思いました。
わたし、髪を切りました。
胸まであった髪を耳がやっと隠れるくらいの短さまで。
だからきっと、あなたがわたしのことを覚えてくれていたとしても、多分あなたはわたしのことがわからないでしょう。
幸せになってください。
どうかいい夢を見てください。
あなたが悪夢にうなされる夜がありませんように。
あなたが、あなた自身を嫌いになってしまうことがありませんように。
だから、どうか、
あなたがわたしのことを忘れてくれるくらい、
いっぱいの幸せに囲まれますように。
ただ、それを切に、切に願っています。
令和8年1月30日
I Love…
『I Love …』とはまた妙なお題。
この後に続く言葉は『You』しかし考えられないけど、…が続いて終わりってことは、禁断の恋か、それとも遅過ぎた恋か……。ふーむ。恋愛のなんちゃらに全然関わってこなかった私には難しいお題すぎる。
クラスの中で誰と誰が付き合ってるなんてのも、私は知らないんだもの。
私の年齢では、恋愛=青春である。
もちろん友だちや部活動なんかも青春に入るだろうけれど、私の友達も話題が尽きたら、彼氏が欲しいか、とか、どんな人が好みか、という話になるから、この考えは間違いではないと思う。
別に彼氏が欲しい訳でもないのに、友達には早く彼氏が欲しいと言う。別に彼氏が欲しい訳でもないが、欲しくない訳でもない。すごく矛盾してるようだけれど、こう言い表すことしかできない。
青春真っ最中と言われるこの時期に、好きな人もいない、男友達もいない私は、周りのクラスメイトの中で劣っているような、損をしているような気分になる。
こう言うと変な感じになるが、友達が男の人と話してると、置いていかれてるような感じがする。
小学校の頃は自然と中学生になったら恋人ができると思っていた。でも現実はそんな漫画みたいにはいかない。急に男の人と同じ家に住むことになったりとか、イケメンな転校生が隣に座ったりとか、他にもいろんな、いろんなこと。そんなのそもそもありえないとわかっているが、それでも心の隅に思い描いていた理想を友達がしていると、やっぱり何か変な気持ちになってしまう。
I Love…I Love …愛しています…愛しています……。
……けれどこんな変な感情を持っていても、限りなくマイナスに近いはずで、考えれば考えるほど何もかもが自分には足りないと思ってしまうのに、考えていると、なんだか自分がとても可愛く見えてしまうのはなんでなのだろうか。