胸の鼓動
抱き合うと聞こえる心音が
私を癒している
ドッコン...ドッコン...
力強い脈だ
いつまで聞けるのか
あなたの胸で眠りながら
いつ来るかわからない不安を感じながら
必死に今だけに耳を傾けている
いつまで一緒にいる?
ずっとだよ
その返事を、いつまで聞ける?
貝殻
可愛い背中だ
おもむろにしゃがんだかと思ったら
小さくうずくまって
懸命に濡れた砂浜を探している
黙々と
遠目から眺める
小さな背中を見守る
大きな海
訪れる度に慌てる背中を
弄ぶかのように
揺れる波
愛おしい時間だ
些細なことでも
折り紙を折る
中心の折り目に向かって
線が並ぶ
角が揃う
カチッとピースがはまるように
ちょうどシンメトリー
なんてことない
けれど数字で測らない
感覚的な数ミリの調整
全てのピースが収まる頃に
私の心も
きっと
香水
匂いがしない。なんで?
母は顔をほころばせ、
ずっと洗ってなかったから洗濯したのよ〜
悲しくなり本音をボヤく
えー、いい匂いだったのに
母は恥ずかしいような、照れくさいような
声色と表情で
1ヶ月くらい洗ってなかったんだよ〜?
と呟きながら台所へ戻る
薄くなった母の香りが鼻にかすかに残っている
仕方がない、
また いっかげつ 待つことにしよう
洗濯しないでねー!
母に駆け寄った
突然の君の訪問。
ピンポーン
呼出音が鳴り、扉を開けると
「...来ちゃった」
そんなドラマチックな登場なら
僕の心臓の速さも
まだ人並みだっただろう
君は足音もなくやってくる
気付いたらそこにいる
目の悪い僕は
そんなはずはないと
一瞬目を逸らす意識が働くものの
そんなはずがないと
凝視してしまう
やっぱり
君はそこにいる
...ッハ....ッハ
短い呼吸
一気に鼓動が駆け上がる
なにか....なにか!!!
目は逸らせずに
武器になる物を必死にイメージする
手はワタワタと動き
足は逃げ足へと変わる
あぁ、どうすれば
最善策のシュミレーションを始めようとした時
相手が動き出してしまった
やばい
とにかく何かしなければ
どうすればいい
頭が真っ白になりかけた、
その時
スパン!!!
鋭いスリッパの音が鳴り、
心配しつつも呆れを含む目がこちらを見ている
「....大丈夫?」
目の前の敵は出際よく新聞紙に包まれ、
ゴミ箱へと放り込まれた
「今日の晩飯、外でどう?」
「あ、おう、いいね」
「....」
空気はもう、いつ行ける?だ
心臓はまだ
敵と対峙しているかのように飛び跳ねているが
僕は急いで準備を始めた
これは、
どっちの跳ね方だ?