未夜野

Open App
6/9/2024, 4:21:49 PM

朝日の温もり


もやりと広がる世界で
白いカーテンが光を浴びている

嗅ぎなれた匂いと隣には大きな丸みが
健やかな呼吸で心地よく耳を撫でる

向かい合い縮こまり
胸元に身を寄せる

ふたり
ひとつの赤子になって

カーテンでは収まらない光が
部屋を満たして

あたたかい

まるで母の懐みたいに

ふたり
ひとつの赤子になって

優しく温く潰される

6/5/2024, 8:12:46 AM

狭い部屋


その部屋は成長した私には少し狭かった

普段ならたくさんの子どもがわいわいと遊んでいるが
今は自分しかおらず
部屋の狭さがより際立つ

部屋の窓から直接見える外
キキィー!と締め付けられるブレーキ音がなる度に
ハッと見上げるが
門を通る人影は目当てのものではなく
まるで一攫千金をかけたビンゴ大会で
ずっとリーチから抜け出せないような
そんな一喜一憂を繰り返す

これだけ人で溢れているのに
どうして私に気付けないのか

こんなに小さな空間なのに
どうして私を見落とすのか

そんな悲しいとも恨めしいとも言える気持ちを涙しているのに
いざ見つかりそうになると恥じて隠れて

強がる私の殻を叩き割り
愛を注いで欲しかった

まるで当たり前かのように
私を見つけて欲しかった

そこから一歩踏み込んで
この部屋から掬いとって

5/24/2024, 3:00:26 PM

逃れられない


私は
見たくなくて
感じたくなくて

色とりどりの
言葉と風景と感情を
ひっきりなしに浴びている

なのに少し瞼を閉じれば
何も無かったかのように
見たくもない理想たちが
現実になって現れる

いつだって鮮明で
どこか有り得なくて
変にリアルなこの時間

一瞬のような
妥当のような

逃げ続ける毎日に
区切りをつける
深い釘

毎夜毎夜にやってきて
私を上手く苦しめる

絶対の檻

5/19/2024, 5:21:22 PM

私にとっては突然でも

君にとっては段階的で

こんなタイトル

つけることすら

おこがましい

寂しいのだって

苦しいのだって

悲しいのだって

私だけ

良いように使うな

腹が立つ

私がずっと便利だと

思っているなら

大間違い

お前の道具は

もうやめた

この衝撃波

その身に届け


[突然の別れ]

5/12/2024, 2:05:45 PM

子供のままで

私の母はなんでもかんでも口を出す人だった
私はそれを受け入れ
思春期には嫌がる素振りはするものの
内心では些細なことでも決めてもらえることに安心していた

今、光指す教会の体をした壇上で
左手の薬指に光る輪が通っていく

がちり、と一生離れなさそうな音がした

現実味のない景色を眺めながら
異動だろうかと考える
安心を貪る相手が変わるだけだ

どこまでも子供だな

と呆れて上がった口角に
彼はにっこりと微笑み返した

行く末は安泰そうだ

Next