衣替え
押し込まれた跡が残る
少し毛羽立ちが気になるセーター
広げると
ふわり
懐かしいような
真新しいような
甘ったるい花が咲く
はて、こんなもんだったか
記憶と照合を繰り返しつつ
ひとつ
ひとつ
あるべき場所へ
いらっしゃい
おかえりなさい
今年もよろしくね
朝日の温もり
もやりと広がる世界で
白いカーテンが光を浴びている
嗅ぎなれた匂いと隣には大きな丸みが
健やかな呼吸で心地よく耳を撫でる
向かい合い縮こまり
胸元に身を寄せる
ふたり
ひとつの赤子になって
カーテンでは収まらない光が
部屋を満たして
あたたかい
まるで母の懐みたいに
ふたり
ひとつの赤子になって
優しく温く潰される
狭い部屋
その部屋は成長した私には少し狭かった
普段ならたくさんの子どもがわいわいと遊んでいるが
今は自分しかおらず
部屋の狭さがより際立つ
部屋の窓から直接見える外
キキィー!と締め付けられるブレーキ音がなる度に
ハッと見上げるが
門を通る人影は目当てのものではなく
まるで一攫千金をかけたビンゴ大会で
ずっとリーチから抜け出せないような
そんな一喜一憂を繰り返す
これだけ人で溢れているのに
どうして私に気付けないのか
こんなに小さな空間なのに
どうして私を見落とすのか
そんな悲しいとも恨めしいとも言える気持ちを涙しているのに
いざ見つかりそうになると恥じて隠れて
強がる私の殻を叩き割り
愛を注いで欲しかった
まるで当たり前かのように
私を見つけて欲しかった
そこから一歩踏み込んで
この部屋から掬いとって
逃れられない
私は
見たくなくて
感じたくなくて
色とりどりの
言葉と風景と感情を
ひっきりなしに浴びている
なのに少し瞼を閉じれば
何も無かったかのように
見たくもない理想たちが
現実になって現れる
いつだって鮮明で
どこか有り得なくて
変にリアルなこの時間
一瞬のような
妥当のような
逃げ続ける毎日に
区切りをつける
深い釘
毎夜毎夜にやってきて
私を上手く苦しめる
絶対の檻
私にとっては突然でも
君にとっては段階的で
こんなタイトル
つけることすら
おこがましい
寂しいのだって
苦しいのだって
悲しいのだって
私だけ
良いように使うな
腹が立つ
私がずっと便利だと
思っているなら
大間違い
お前の道具は
もうやめた
この衝撃波
その身に届け
[突然の別れ]