子供のままで
私の母はなんでもかんでも口を出す人だった
私はそれを受け入れ
思春期には嫌がる素振りはするものの
内心では些細なことでも決めてもらえることに安心していた
今、光指す教会の体をした壇上で
左手の薬指に光る輪が通っていく
がちり、と一生離れなさそうな音がした
現実味のない景色を眺めながら
異動だろうかと考える
安心を貪る相手が変わるだけだ
どこまでも子供だな
と呆れて上がった口角に
彼はにっこりと微笑み返した
行く末は安泰そうだ
エイプリルフール
やっほ
軽く手を挙げ挨拶するその見覚えのある顔
いや、え?
2度見する
少し肌にツヤが出たかな
よく見てた頃は忙しくてげっそりとしていた
変わらず堂々とした態度で当たり前かのようにやってくる
で、なんだっけ?
いや、こっちのセリフや!
と咄嗟にいつもの返し
ケタケタと無邪気に、でも隠しながら笑う仕草
懐かしいなぁとか思って見ていて
スッと視界が明るくなる
夢だと気付くまでに時間はかからない
全てを理解して
はらりと涙が落ちる
あぁ、そうか
今日は4月1日
ふざけるのが大好きな
君にピッタリの日
怖がり
本当は幽霊なんかいないって思ってるし
暗闇でも何も起こらないってわかってる
絶叫マシンに乗っても死なないし
虫に食べられることもない
大きな音は鼓膜が揺れてるだけだし
心配のほとんどが まず起こらない
全部わかっている
ただ、わかっているのに怖いだけ
私の脳が私の脳を騙そうとする
ずっと隣で
似た者同士
いつも一緒
手を繋ぎ
ほつれまでそっくり
お風呂上がりの洗濯バサミ
隣で揺れる
でも
少しずつ露わになる違い
僕は足裏
君はつま先
気付かないうちに
二足の歩みは微妙にズレて
今日も並んで洗濯バサミ
ずっと隣で揺れた僕には
直視できないほど懐かしい
あの頃の君によく似た君がいる
Love you
間違いなく愛しています
なのになぜ
何度繰り返しても
答えは返らないのです
あなたがいなければ生きていけない
間違いなく愛しています
なのになぜ
間違いない愛は何色ですか
どれも違えど愛色なのに
満たされないのは不思議です
わたしはあなたと生きていきたい
間違いなく愛しています
なのになぜ
満たされる色は愛ですか