《空が泣く》
「今日の天気は、晴れ時々曇り、ところによりにわか雨があるでしょう。昼過ぎから不安定になりやすく、いきなり雨が降るかもしれません。傘の用意をお忘れなく」
なんやねんな。
だいたい、こんなん天気予報ちゃうっちゅうねん。
ラジオにツッコミを入れながら朝ごはんをいただく。
しばらくすると
ほんとに降ってきた。わりと早い時間帯から。
しかもけっこう激しく。
今年の終戦記念日は雨が降った。
自分が生きてきた中で、何回目の終戦記念日だろうか。
ほんとに今まで雨が降ったこと、あったかぁ?
カラッと晴れてて、暑い日差しの中での黙祷が
記憶に残っている。
この雨を涙に例えるならば
号泣と言えるような。
かつての精鋭たちが
今の日本を憂いて流した涙なのだろうか。
そんなことを思った2023.08.15.
《星が溢れる》
幼い頃に見た夜空が忘れられない。
市内に住んでいれば、夜などは街の明かりで
星の輝きはかき消されてしまうし
夜、外出したところで空を見上げることもない。
専ら星を見るといえば、プラネタリウムを鑑賞する
くらいで、星座を教えてもらっても
ピンとこない。
だいだい、「あの星とあの星をつなぐとね?ほら!」と
教えてもらっても
指さした方角の「あれ」が「どれ」なのかさっばり
わからないから、興味の沸きようもない。
夏や冬になると
母の実家に帰省することが多かった。
前方には海、後方には山が連なる田舎町。
夏でも窓を開けていれば涼しい風が入るので
エアコンはなく、蚊取り線香と蚊帳がある部屋に
寝る。
年頃になれば従兄弟が集まり、たまにしか帰省しない
私たちと会えない時間を埋めるように話込む。
夜更かししている、といったいつもとは違う時間の使い方に大人っぽさを感じながら
窓の外を見る。
真っ暗。波の音だけがたぷたぷと聞こえてくる。
明かりといえば
たまに走り去る車のヘッドライト程度。
空を見上げる。
びっしりの星。星と星をつなげて形を作るなんて
何万通りもできそうなほどの星の数。
蠍座?蟹座?
夏の大三角形?
どこにでもできそう。
何時まで起きていたのか、なんてこともわからないし
従兄弟たちとどんな話をしたのかなんて
覚えていない。
覚えているのは
あの家で、2階の窓から眺めた
宝箱から溢れ出たような数の星。
今は、住む人もいなくなってしまったから
その家に入ることは叶わないのだけれど
願わくばもう一度、あの窓から
深夜に空を仰ぎたいと思っている。
《過ぎ去った日々》
「あの、こんな私にも就職できるでしょうか?」
仕事相談所の窓口で相談した。
「今までやってきたことを書き出してください。
わたしはこの作業を『仕事の棚卸し』と呼んでるんですよ。ほはほ。嫌でも自分と向き合いますから、その中から自分の強みを見つけていきましょう」
自分はできると思っていても
他人にしてみたら
そんなこと、できて当たり前でしょ?
って思われるような気がして
自信もなくて
殻に閉じこもってた。
誰かのSNSを見ては
楽しそうな日常が眩しすぎて
つい、アプリを閉じてしまう。
そんなこともあったね。
順調な時ほど
過ぎ去った日々を振り返ることができるものね。
必死だと
振り返る余裕もないから。
どんな経験も
自身を作ってきたものだから、大切なもの。
過ぎ去った日々を
振り返るのは、死ぬ直前でいい
っていうほど
今を
がむしゃらに生きてる?
《お金より大事なもの》
万年筆が好きだ。
万年筆はお金で買うことができる。
万年筆で日記を書く。
1日の夜にその日のことを思い出しながら
つらつらと文字を並べる。
そこにはおかねでは買えない大事なものだけが
書き記されている。
バイクが好きだ。
バイクはお金で買うことができる。
バイクに乗って海を見に行く、山に入って
ワインディングを楽しむ、
コップ1杯のコーヒーを求めて
県境を超えてただひたすらに走る。
風を受け、照り盛る太陽のもとにさらされ、
落ち葉に危険を感じて、路面の氷に運転を諦める。
その一瞬一瞬はお金では買うことができない。
猫が好きだ。
無邪気に遊び、飼い主に甘える様子を
見ているだけでも癒される。
彼らにとっては
毎日が新しく、昨日は昨日。今日は今日。
人生の手本を見せつけられているようで
お金より大事なものを教えてもらっている。
日々のいとなみ。
今、こうして文字を打ちながら
お金より大事なものを探している。
そして気がつく。
お金で買うことができない大事なものを
体感するためには
お金は必要だということを。
《月夜》
満月に向かってピースサインするの。
その後、縁を切りたい人を思い浮かべて
ピースサインをハサミのようにチョキンって切る仕草をするの。
そしたら、縁が切れる
というおまじない。
幼い頃に読んだ雑誌に載ってた。
大切なことは何一つ覚えていないのに
こんなことは覚えている自分に時々びっくりする。
ほんとなのかな?
半信半疑だった。
少し明るい夜
ふと見上げると満月。
思い出した時にチョキン♪
ってするくらいだった。
ある日
切れた鎖のような、綱のようなものが
目の前にどさっと落ちてきた夢をみた。
その日を境にみるみると状況は変わった。
私は拒絶する勇気を持った。
関わることを避けることができるようになった。
今までの嫌な思い出を手放すことができるようになった。
すると
その縁とは
もう2度と交わることがないようになった。
もう、泣かなくていい。
もう、理不尽だとわめかなくていい。
だから、振り返る必要はないし、振り返ってはならない。
だから、歩き出していい。
そう。
勇気をもって
大きな一歩を踏み出したのだから。