《もう二度と》
同じ過ちを繰り返さない。
自分のこころに正直に
ダメなものはダメだと言う。
断ることを極端に恐れてたあの頃に
戻らないために。
幼い頃から容姿についていじられてきた。
貧乏臭いとか
不細工だとか。
半世紀ほど生きていて
未だ
生き恥晒してる
という自虐の念は拭い切れてはいない。
幼い頃から言われ慣れすぎてきたから?
他人のせいにするのは簡単で、
でもそのせいで鬱屈するのはもったいなくて
言わせておけばいい
そう思えるようになったのは
ごくごく最近のこと。
もう大丈夫。
清濁あわさっているのは
何に対しても同じだから。
だからもう大丈夫。
そろそろかな。
《静かなる夜明け》
竹藪の竹。
曼珠沙華。
目に見えない根は
全部繋がっている。
私たちの存在も
なにかしらどこかで
目には見えない何かで繋がっている。
芽生えてから枯れ果てるまで
誰もその存在を
摘み取る権利はないから。
《heart to heart》
《手のひらの宇宙》
薬局へ行った。
頭が痛かったから頭痛薬を買い求めた。
白衣を着た販売員に代金を渡した。
おつりをいただく際に
右手を出した。
その手のひらを見た販売員が
「あなた、芸能の仕事?」とたずねてきた。
「いいえ」と答えると
「あなた、向いてるのに残念ね」と言った。
「表の看板見なかった?手相を診るのよ。
時間があるなら、診ましょうか?」
頭が痛かったから、遠慮して帰った。
手のひらを見ながら歩いた。
手のひらのしわ。
そこに未来が描かれているのなら。
幸せな未来が描かれているのなら、
ずっと握って離さないでいようと
手のひらをぐっと握った。
と同時に
握りつぶしてしまうんじゃないか
と怖くなって
また手のひらを見つめた。
手のひらのしわは
夜空に見える星の位置と同じように
少しづつでも変化しているらしい。
肉眼で見える夜空は
手のひらのしわに似てるかもしれない。
そんな
手のひらに頭痛薬をのせて一気に飲んだ。
手のひらの宇宙。
いいえ
手のひらに宇宙。
そっとしといてほしい。
泣き止むまでまだ時間かかりそうだから。
そっとしといてほしい。
受け入れるには準備が必要だから。
そっとしといてほしい。
外の明るさはまだ眩しくて目をあけることが
できないから。
そっとしといてほしい。