《手のひらの宇宙》
薬局へ行った。
頭が痛かったから頭痛薬を買い求めた。
白衣を着た販売員に代金を渡した。
おつりをいただく際に
右手を出した。
その手のひらを見た販売員が
「あなた、芸能の仕事?」とたずねてきた。
「いいえ」と答えると
「あなた、向いてるのに残念ね」と言った。
「表の看板見なかった?手相を診るのよ。
時間があるなら、診ましょうか?」
頭が痛かったから、遠慮して帰った。
手のひらを見ながら歩いた。
手のひらのしわ。
そこに未来が描かれているのなら。
幸せな未来が描かれているのなら、
ずっと握って離さないでいようと
手のひらをぐっと握った。
と同時に
握りつぶしてしまうんじゃないか
と怖くなって
また手のひらを見つめた。
手のひらのしわは
夜空に見える星の位置と同じように
少しづつでも変化しているらしい。
肉眼で見える夜空は
手のひらのしわに似てるかもしれない。
そんな
手のひらに頭痛薬をのせて一気に飲んだ。
手のひらの宇宙。
いいえ
手のひらに宇宙。
1/18/2025, 11:30:58 AM