キラキラと輝く街をふっと見てから、手元に目を戻す。
終わらない残業。数え忘れた何連勤。申請しても通らない有給。押し付けられる仕事の量に比例しない給料。
ぼーっとそんな事を考えながら、キーボードをカタカタと叩く。
今日も泊まり込みか。晩御飯食べたっけ。カップ麺食った気が…あれは昼か。朝も食わずだったなー。
不健康で、両親に心配されるような生活。
うるさい上司、使えない部下、鬱陶しいクレーム、扱い切れない新卒、圧力をかけてくる上層部。
そいつらに囲まれて、何の意味があるんだろうななんて思いながら今日も俺は仕事を進める。
サラリーマンが社会の歯車なんて嘘だ。実際は会社の肥やしでしかない。
それでも俺は働いて、「何かの歯車」になれるよう勤めている。
ずっと、「何者か」になりたかった。
学生時代からずっと、無意識的にそう思っていた。それを最近自覚した。俺は「何か」になりたいんだと。
人の役に立つ、一人で立っていられる、俺一人で多くを成し遂げられるような「何か」に。
そんな日が来ないことはわかっている。俺一人で成し遂げられたことなんて今まで一度もなかった。人に甘えてばかりで、大して人の役にも立ってこなかった。
それでも俺は、この世界で、この街で生きていく。
「何者か」になるために。
やりたいこと
・露語勉強
・伊語勉強
・お上品な人になりたい
・美人になりたい
・痩せたい
この願いを去年の大晦日に立てて以来、何も成し遂げられずに半年が過ぎました。
朝日の温もりを感じながら私は、ベッドから起き上がろうかと迷う。
もうかれこれ三十分はこうしている。
ぽかぽかした温かさとふわふわのベッドで、朦朧とした意識で今日起きる幸せについて考える時間。
私はこれが、お金や愛よりも自分を満たせる方法だと知っている。
「お前が決めて良い。…嫌なら断れ。」
私は今、間違いなく人生の岐路に立っている。
両親の反対、世間の反対。家柄。
そのすべてが障害になっている私達の人生。
貴方は私に、駆け落ちしようと言った。
私を見る貴方の熱っぽい目は、懇願するようにも見える。
頷けばずっと隠れて生きなくてはならない。断ればずっと鳥籠の中で生きなくてはならない。
その2つを比較した時、どっちが良いかなんて明白だった。
私は貴方の腕を強く引いて抱き締める。
「貴方と行くわ。絶対に離れない。絶対に貴方から離れたりしない。」
私がそう告げると、貴方は目を見開いたあと、強く抱きしめ返してくる。
「…ああ…。ずっと一緒だ。死んでも離さない。」
貴方の大きな手と私の小さな手を離れないようしっかり繋いで、夜の街に飛び出した。
絶望的な状況の中。
美しく輝く星の光が眩しくて、目を細めながら俺は君に言った。
「世界の終わりに、君と二人で話したかった」