日陰者の私には鬱陶しい。
何故か私に話しかけてくる太陽のような奴。
ろくに返事もしない、面白い話も出来ない私に
いつも話しかけてくるアイツ。
他にも話す人はいっぱいいるだろうに。
私の読んでる本がたまたま知ってる作品だからって毎日話に来る。
そろそろこっちから話しかけてやろうかな。
どうして貴方は私に構うの?って。
私、知ってるよ。
貴方が本なんてほとんど読まないこと。
貴方が私のために本を読んで話しかけに来ること。
私もそろそろこの部屋から出てみようかな。。。
『日差し』より。
走り回る先生。いつも忙しそうにしている。
慌ただしくベットを運ぶ看護婦さん。大変そう。
昨日まで騒がしかった隣の部屋。今日は静か。
新しいベットが廊下を通る。新入りさんかな。
今通りかかった女の人。綺麗だった。
生まれた時からそこにいる彼女にとって、
それは世界の全てだった。
真っ白い部屋の壁に、真っ白いベット。
消毒液のにおいのしない世界を彼女は知らない。
窓から見える木の葉だけが、彼女に四季の移り変わりを感じさせてくれる。
この春。彼女は初めて病院から外の世界に出る。
両親は彼女が外に出られると聞き泣き崩れた。
外の世界の事を楽しみに語る娘の目を、両親はまっすぐ見ることが出来なかった。
半年後。その病室に彼女の名前は無くなっていた。
『狭い部屋』より
なんでもは無理ですね……。
ヒーローは私を救ってくれない。
ヒーローは私を見捨てて世界を救う。
悪役は私を救ってくれる。
悪役は私を救って世界を見捨てる。
皆のために私の事は見殺しにして欲しかった。
ありがとう。さよなら。
『善悪』より
何も要らなかった。
地位も、名誉も、お金も。
自分の命すらも、惜しいとは思わなかった。
君と出会ってから、僕は死ぬのが怖い。
もう少し一緒に居られたら良かったのだけど、
多分無理だ。
最後にもう一度、貴女に会いたかった。
あの夜を懐かしみながら、僕は永い眠りにつく。
君は泣いてくれるかな。それとも新しい人と結ばれて、僕のことなんて忘れてしまうのかな。
君と出会ってから、僕は命が惜しくてたまらない。
『何もいらない』より
小倉百人一首、五十番歌、藤原義孝の二次創作。