無灯

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何も要らなかった。
地位も、名誉も、お金も。
自分の命すらも、惜しいとは思わなかった。


君と出会ってから、僕は死ぬのが怖い。
もう少し一緒に居られたら良かったのだけど、
多分無理だ。
最後にもう一度、貴女に会いたかった。


あの夜を懐かしみながら、僕は永い眠りにつく。
君は泣いてくれるかな。それとも新しい人と結ばれて、僕のことなんて忘れてしまうのかな。


君と出会ってから、僕は命が惜しくてたまらない。



『何もいらない』より




小倉百人一首、五十番歌、藤原義孝の二次創作。

4/21/2023, 2:43:22 AM