#4【未来への鍵】
※同性愛要素、過呼吸の表現を含みます
「ひゅっ、かはっ…はぁ、っは…」
体育館裏。
僕は隣で過呼吸を引き起こした君を宥めている。
君は喘息持ちで、吸入をしたばかり。
「だいじょーぶ、だいじょーぶ…」
背中をさすってると、呼吸のスピードが一定になってきた。
「…っう、ひくっ、はぁ……落ち着いた、」
「良かった、お疲れ様。」
「俺…ずっとお前に迷惑かけてるよな…
ごめん…」
君は申し訳なさそうに僕に頭を下げる。
「謝んないで、迷惑なんかじゃないよ。」
「……ハグ、して…欲しいかも…」
君の顔は真っ赤だ。
親友、なんじゃなかったっけ…?
「分かった。おいで?」
そんな疑問を抱きながらも、両腕を広げた。
ぎゅっ
僕の腕の中に入ってきた君。
今はとても小さく見えた。
「…好き。」
腕の中から聞こえてきた言葉に、僕は軽く飛び跳ねてしまった。
「へ!?」
「ふへ、びっくりした?」
君は笑いながら言う。
「も〜…分かりにくい冗談禁止!」
「は?本当だし。」
声のトーンが低くなった。
「ほんと…?」
「ほんと。」
伝えないと、今。
好きだって。
「僕、も…好きだよ。」
「え、マジで言ってる?」
「うん…」
未来への扉が開く音が、聞こえた気がした。
#3【星のかけら】
※同性愛要素を含みます
「ね、今日流星群見れるらしいよ…!」
暖炉の暖かみが広がるコテージ、僕は君にそう言った。
「マジか!見てよ?」
君は興奮気味になりながら答える。
「うん!」
楽しみだなぁ…
遂にきた流星群の時間。
君と二人で一枚の毛布を羽織って、バルコニーの椅子に座った。
「早く来ねぇかな、さみぃ…」
君がそう言った途端、2つの星が流れた。
「だよね…って、来たよ!」
僕が指差すと君は前のめりになって、目を見開く。
「うわマジじゃん!」
「きれー…」
「だな!見れてよかった…」
君が僕に寄りかかってきて、心臓の動きが激しくなる。
「あ、そうだ…これ!」
金平糖。星に夢中で忘れてた。
いや、君に夢中…?
「え、いい?」
「良くなかったら渡してない。」
「ふははっ笑、ありがとな。」
君は金平糖を口に放り込む。
「美味しい?」
「これ久々に食べた!、めっちゃ美味い。」
「よかった…星のかけら、みたいな。」
「なるほどな〜、お前らしい。
あ、やっべ星見るの忘れてた!」
焦りながらも楽しそうな君の横顔。
…好きだな。
勿論横顔だけじゃない。
笑顔だって、優しくて明るい性格だって。
全部、全部。
大好き。
#2【RingRing…】
RingRing…
そう鳴るのが聞こえる。
電話だ。
出てみると、幼なじみの君からだった。
「いつもの場所に来て」
と。あの神社だ。
高鳴る胸の鼓動。
なんとなくそれに歩調を合わせる。
あ、いた。
「隣、おいで。」
「ん。」
君が軽く叩いたところに座った。
「今日あげたい物があってさ」
君はそわそわしながら、ポケットを探る。
「何?」
「これ。」
俺に差し出されたのは、指輪。リングだった。
「結婚しろって?笑」
俺がそう聞くと、君は答える。
「そんな訳ないだろ笑…多分。」
「多分、ね〜…」
大好きな君との関係が、いつまでも続きますように。
#1【追い風】
「追い風だね。向かい風じゃなくて良かった。」
君は言う。
「向かい風の時、私の盾になってくれる?」
「ううん。」
「え。ひどい…」
心の中で落ち込む自分がいた。
そこで君は口を開く。
「僕が君の追い風になるんだ。」
「…それじゃあ私が風に挟まれて動けないよ笑」
「そう、かぁ…」
真剣に悩む君は、愛おしかった。