プレゼント____
記憶上、初めて家族に
気を使ったことを覚えている。
それは、5歳のクリスマスの日だった。
『サンタへ。かわいいおうちをください』
私は、そう手紙を書きツリーの靴下の中へ入れた。
そして眠りにつくギリギリまでニヤニヤしていた。
朝起きると、私は出窓の方の空き地をみた。
でも、そこには家も何もなかった。
あれ?と思い他の窓の外も見る。
でも、海外のお姫様みたいなお屋敷のお家は
1つもなかった。
あったのはツリーのしたにあるプレゼント。
「イルカ、開けてみ」
そう、父が言った。
私は、どうしてお家がないのか、
と不思議に思いながら、
ラッピングされたプレゼントをビリビリと破く。
中に入っていたのはキッズテントだった。
周りは動物や花が描かれていて、
森の中の小屋のようだった。
「わぁー!やったー!」
私は私にできる最大限の笑顔を作り、喜んだ。
『チッ、本物の家じゃないのかよ』
と正直、心の中で思っていた。
次のクリスマス……
『今年は車にしてやるか』
ツリーの下にはトミカがあった。
大空____
「クジラって空好きだよね〜」
不意に言われた言葉にどきりとする。
「そう?」
その言葉を言ったそばから後悔した。
否定的に質問的にするより
受け入れたほうが話は早く終るのに。
「だって、気づいたらいつも空見てるもん」
また、どきりとする。
「あー、確かに」
今度は上手く答えられた。
確かに空は好きだ。
毎日見てても飽きない。
でも、空をずっと見ていると
自分に酔っている、
闇アピール、
そんなことを思われそうで気をつけていた。
でも、更に気をつけないと。
寂しさ____
寂しい。私の気持ちをわかってくれる人がいなくて寂しい。
わかってる。そんな人周りにたくさんいるって
わかってる。
毎日言われるんだ。
「ワガママ」「気持ち悪い」「クズ」
毎日毎日自分に言ってるんだ。
じゃないと自分への怒りが収まらない。
欲張りでワガママでなんにもできない自分。
それなのに、周りは完璧なのに、
私はたくさんの幸せを持ってるのに、
寂しいなんて思わないはずなのに、
寂しいんだ。
風邪____
2022/12/16 小説日記
〈12/15・夜〉
夜になると私はおかしくなる。誰だって自己嫌悪をしたり反省をする時間。それが寝る前や夜の人がほとんどだろう。昨日の夜、正確には今日の深夜、
ずっと寝れなかった。
寝ようとしている自分も
気を紛らそうとしてYou Tubeを見る自分も
自分が嫌で泣いている自分も
起きている自分も
過去の自分も
今の自分も
全部気持ち悪かった。
今すぐこの体から抜け出して何者でもない“何か”になりたくてひたすらベッドの中でうめく。そんな自分も気持ち悪い。
〈12/16・昼〉
結局全く寝た気がしなく目が覚めた。一時間ってところか。受験生ならみんなが不安で睡眠時間はそれぐらいなのかも知れないけど。周りが同じように辛いのに私だけ甘えてはいけない。そう思った。ダメもとで手をおでこへ当てたけど寒いからか何も感じ取れなかった。
目がカピカピになっていたけれどどうしてそんなに自分が気持ち悪かったのかは覚えていない。いつもそうだ。何に苦しんでどうして泣いていたのか。全く覚えていない。
学校へ、行く。
「あれ、面白い?」
前の席のひかりが挨拶を通り越して違うことを聞いてきた。あれ、というのは彼女に一昨日貸してもらった小説だ。
「うーん、微妙かな〜」
「やっぱそうだよね〜、私もあの話よくわかんなかったもん」
話はわかったのだが一章まで読んでみたもののただの恋愛話にしか私は読み取れなかった。人間関係もとてもシンプルでまるで現実味がない。
私は買ったばかりの「人間みたいに生きている」という本を思い出した。最近はそれを読んでいたのだがひかりに「マジで誰がだれたがわからんくなるよw。貸してあげる〜」と言われせっかくだから貸してもらうことになった。本当は今読んでいる小説を読み切ってから借りたいのだが、そんなワガママは言えない。
唯一、1日の中で好きな朝読の時間はありきたりな恋愛話を読む退屈な時間へ変わってしまった。
「気持ち悪」
無意識だった。いつもは急に変な声を出したりビクッと体がはねたり歌を歌いだしたりいろんなことをしてその言葉を抑えていた。なのに、今日はその言葉をいうのが息をするのと同じぐらい普通に声となった。
「なにが?」
隣にいた親友が問い掛ける。
「…あれあれ、いちのすけの使い果たしたティッシュのせいで教室のゴミ箱溢れてんじゃん」
「え!!あれ、いちのすけの鼻かんだティッシュだったのー!!」
「そうだよ笑」
「うっわー、あつい自分で持って帰れよ」
危ない。危なすぎる。上手く話題を変えたけど、危機一髪だった。すぐにいちのすけのことを思い出してよかった。私達は手を洗い少しダベったあと急いで教室へ戻った。
もう、その後昼に何か起こることはなかった。強いて言うならいつもより過去の嫌なことを思い出す回数が増えたぐらいだ。
〈12/16・夜〉
私は、昨日の夜書いた日記を読んだ。だけど、それはとても読める字ではなかった。ただひたすら自分の悪口を書いているだけ。パニクっていたせいか誤字脱字も酷く後半はほぼ「気持ち悪」という言葉で埋め尽くされていた。私は怖くてその日記をスマホのメモ帳の中から消した。
覚えていないのが余計に怖くてこのままだと二重人格になりそうでどうすればいいか分からなかった。
愛を注いで___
2022/12/13 小説日記
母が痛いを思いをして産んでくれた私。ここまで育ててくれた両親。私に愛を注いでくれた。親が大事に大事にしてくれたこの顔がだいっきらい。
誰にでもコンプレックスはあるだろう。私は目だ。そりゃ、自分のすべてが嫌いだけれど特に目。細くて小さくて可愛げのない一重の目。まつ毛は長いのに直毛でまったく可愛く見えない。
雨の日は、生えているまつげが内側にくるっと癖になり目の中へ入ってくる。ビューラーでなんとかしようと朝やっても数分後にはすぐ元に戻っている。
私の親友は目が大きくてパッチリでおまけにまつ毛は私より長く、何よりくるっとまつ毛パーマをしたんじゃないかと疑うほど綺麗に上がっている。そして、二重。
だけど彼女はそれが嫌だと言う。でも、私はそれがいいと思う。無いものねだりだ。そんなのわかってる。分かってはいるけれど彼女が可愛いのは紛れもない事実。だから、中1の頃だって化粧をしているのかと毎日女子に聞かれていた。しかし、彼女はそれが嫌だったらしい。どんなに「可愛い」と言われても全てお世辞に聞こえると。
せめて自分の可愛さを自覚していれば私は心が少し軽くなるような気がしていた。
「私、高校行く前にまつパしようと思ってて」
「え?!まじ?」
「私ね、梅雨の時期とかになると生えたまつげが入ってくんの。直毛過ぎて。お風呂の時なんてずっと入りっぱw」
「高校ってまつパ禁止やで?」
「うん、でもそろそろきついんやよねw」
「クジラはそのままのほうが可愛いよ」
「いや、私人類最強にブスだわ」
「いや、マジで可愛いから」
学年の中で飛びきり可愛く、それを自覚していない彼女から言われてもなにも嬉しくなかった。
時々苦しくなる。彼女と私は月とスッポン。豚に真珠。もちろん私は、スッポで豚。彼女は月で真珠。
申し訳ないけれど彼女からどんな褒め言葉をもらっても全く嬉しくない。彼女も周りから言われるとき、そうなのだろうか。