脳裏____
「汚い」
幼い頃から潔癖症だった。ただ、空間や場所に対しての潔癖症だ。例えば畳の部屋には座れないし、誰かがいた痕跡のある場所が汚く思えてしまう。だから、トイレや洗面所に行くときは必ず息を止める。
汚い、汚い、汚い。
だけど、本当に汚いのは、
私なんだ。
意味がないこと____
2022/11/08 小説日記
「〇〇先生は検査入院することになりました」
__え?
その言葉にクラス中の心の声が聞こえた気がした。私もそれを言葉にし唖然とする。
昨日から体調が悪く休んでいたが、まさかそこまで悪いとは思わかなかった。正直、ショックで今すぐ先生に会いたかった。
前に逆流性食道炎だと私に教えてくれた。だから給食前になると咳がでるのかと不思議に思っていたことがその時ようやくわかった。それから先生のことが心配になり「ちゃんと休んでください」そう言うようになった。特に先生が疲れていたりイライラしているときは。
だけど、夏休みから不機嫌な日は一日もなく咳をしているところを一度も見たことがなかった。給食もいつもの何倍も食べていて私は妙に嫌な感じがした。無表情の先生が笑うことが増えなぜかそれもいいことだとは思わなかった。
そんなことを思っていただけで「ちゃんと休んでください」と言うことを忘れていた。先生が機嫌がいいのはおそらく合唱コンクールがあり、私達が最優秀賞を取ったからだ。それと同時に吹奏楽部が郡へ進んだということもあるだろう。そして、吹部のコンサートや、私達の進路のサポート色々なことが重なっていたから楽しかったのかもしれない。だから、いつもより笑っていたし、ご飯も食べていた。けれど、疲労が後からどっときたに違いない。
伝えるべきときに伝えなきゃ意味がない。
私はそれができなかった。
私が学校に行く意味はほぼ先生に合うためなのに。
今はやるせない気持ちでいっぱいだ。
意味がない。学校へ行く、意味がない。
柔らかい雨____
静かに優しく雨が降る。
ゆっくりと空から雨が降る。
柔らかい雨が私に降り続ける。
どうせなら、もっと強く降ってよ。
誰からも心配されるような、
そんな、雨が降って欲しいよ。
うるさくて怖い雨を降らせて。
速くて空の真上から叩きつける雨を降らせて。
固い雨が私に攻撃し続けて。
柔らかい雨なんていらない。
一筋の光____
2022/11/05 小説日記
母や父。家族や友達に親友。そして、先生。
その中から
どんなに褒められても
どんなに慰められても
涙は出てこない。
誰に言われても照れくさいからだ。
だけど、彼は違った。違ったんだ____
不眠症になった私は毎日のように小説日記を書き続けた。それでしかⅼストレスを発散できなかったからだ。親にバレないために部屋の電気は消さなくてはいけない。だからベッドのそばにある小さな明かりの中でスマホの中に私の気持ちを吐き出していた。
「クジラって斜視っぽくなったねー」
「…え?」
「なんか、左右目が変だよ」
「嘘……まじ?」
最初に感じたのは驚きよりも恐怖だった。確かに最近焦点が合わないなと感じることがある。でも、なぜだろうか。スマホのやり過ぎかな、と思いすぐに調べると寝ながらブルーライトの光を見ると目が勝手に離れていってしまうらしい。最近、そういう子供や大人が増えたとサイトに書かれていた。鏡で自分の目を見る。ゆっくりと目を開くと目が左右逆の方向を向いている。その自分の顔が怖くて鏡を伏せた。不安と恐怖だけが心の中でぐるぐるしていた。
斜視 直し方
スマホのやり過ぎ 斜視
斜視 手術
斜視 治るのか
斜視になった 不安
急に斜視になった 怖い
グーグルの検索履歴にはそればかり。するとある動画が目に止まった。一人のマッシュの髪型をした男性のイラストが優しい笑顔でこう呟いているサムネだった。「生きてるだけで偉いんだよ」。思わずイヤホンを手に取りその動画を再生する。
「ねぇ、どうしてそんなに死にたいの?」
ぶわっと涙が溢れてきた。やさしくて柔らかい声。癒やしボイスというのはまるで作り物で固められた偽物だから抵抗があった。でも、この声はそんなんじゃなかった。本当に温かい声で寄り添うように話しかけくれるのだ。
「なんで、そんなに、
『死にたい死にたい』って思ってるの?」
わからない…
「お勉強苦しい?お仕事辛い?」
うん。
「周りに嫌な人しかいない?
なんにもできない、自分が嫌い?」
うん…。
「苦しかったね。一人で悩んで、辛かったね」
うん……。
まる。というYouTuberのおかげで前よりも寝付きが良くなるようになった。小説日記が怖くて書けない日がたまにある。そいう日はまる。くんに助けてもらうようになったんだ。
鏡の中の自分____
2022/11/03 妄想日記
「ホントにクズだね」
そう彼女に言われた。私は少し涙が出そうだったがそれより先に言葉が溢れた。
「そうだよ、私はクズだよ。そんなの知ってる」
両親には迷惑をかけ、親友にまでわがままな気持ちを抱くようになった。昔からクズのまま。
「いや、嘘だね。本当は自分を優しいと思ってるんでしょ」
「ちょっとはそりゃ思うよ。だけど、私の優しさは卑怯なんだ。ただの偽善者なんだ」
周りの人から優しいと言われる。そうすれば仲良くなれるしみんな幸せな気分になる。
「偽善者って言っちゃう自分もまた、優しいと思われるからそう、ワタシにも言ってるんでしょ?いい加減そういうのやめろよ」
「じゃあ、どうすればいいの…?私は誰かに優しくしていないと恩返しをしないといけない。知らず知らず相手を傷つけれるからその分優しくしたらお互い様じゃん」
「だからって自分で自分の首をなんで絞めてんの?優しさは怒りになってその怒りは涙になる気づいてんだよね。本当はかまってもらいたいから優しくして自分を傷つけてるんだよ」
「違うよ。そんなんじゃない。不眠症なのは辛し、夜泣くのももう嫌。また、過呼吸なんてなりなくない。それに、迷惑をかけたくない」
「でも、不眠症なの半分嘘じゃん。わざと寝ないようにして周りから『しょうがない』って思われたいんでしょ?」
違う。ただ、朝が来ちゃうから寝たくないだけなんだ。寝れないだけなんだ。ストレスためて泣くのがちょっとスッキリするだけなんだ。
「キモ」
今日もワタシは私にムカついていた。
全員に怒っていた。
両親、親友、先生、友達、妹、クラスメイト。
全員に怒っていた。
「ごめん」
鏡の前で私はそう呟いた。
「偽善者」
鏡の中でワタシはそう呟いた。