『眠りにつく前にホットミルク、飲みませんか?』
あたたかいですよ。と、私の前にホットミルクを差し出す。湯気が揺らめき、とぷん、とミルクが波打った。
でも……
「アナタ、誰ですか?」
そう、目の前の人を私は知らない。
赤の他人が不法侵入している状態。
『私はまどろみのなかに見える妖精ですよ?
怖がらないで、ほら……』
またホットミルクを勧めてくる。
時計は25時を回っている。最近寝不足が多くて疲れていたし、もう不審者でもなんでもいい……と、ホットミルクを手に取りごくんと飲んだ。
その瞬間わたしはすうっと眠りについた。
【『まったく、こんなところで寝てしまっては良質な睡眠は取れませんね。』
僕は疲れきった彼女をベッドの上に乗せ、布団を掛けてやった。アラームだって、いらない。10連アラームは体に悪いのだ。
では『おやすみなさい、またいつか』】
愛してるとか大好きだとか
言える相手がいたらいいな
「好きーーーーーーーー!!!!!
あなたの事がずっとずっと好きだったーーー!!
どうしようもなく、好きーーーーー!!!」
冬の湖に全部吐いた。
片思いで積もらせてきた想い、全部。
こんな事しても、伝わらない。
意味ないのにな
白い息混じりの乾いた笑いが込み上げてくる
はは、ははは………、はあ。
口元をマフラーで塞ぐ
「もう帰ろう」
そう言って振り返った時だった
「好きだああああああああああァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!
あいつのこと、好きになっちまったああ!!
ユキィ!!好きだよーーー!!」
私より遥かに大きい声で湖に、あなたは好きを吐き出していた。
ユキ……私の名前。
そして、この声は私の好きな人。
私はすうっと息を吸う
冷たい空気を肺に入れ、全部吐くんだ
「ケンターーーーーーーー!!!!!!!!!
あなたの事がずっと好きだよーーーーーー!!!
4月からの一目惚れで今までずっと好きでいたのーーーーーー!!!!
だから!もし願いが叶うならァ!」
私はあなたの方を向いた
あなたも私の方を見ていた
「俺も!ユキの一生懸命なところが好きだーー!
それだけじゃない!可愛い笑い声も、笑顔も、全部好きだーーー!!!!これからは俺が傍で笑わせたい!!!!だから!もし願いが叶うならァ!!」
すうっ、
私たちはほぼ同時に息を吸った
「「あなたと付き合いたーい!!!!!!!!」」
「「好きだーーーーーー!!!!!!!!!!」」
超えが枯れるまであなたと好きを重ねた。
あなたとまたほぼ同時に声が掠れ、やがて聞こえなくなる。
私と、あなたが、向き合ったとき、私はあなたの胸に飛び込んだ
『声が枯れるまで』
ああ、 高く。
高く。
もっとその先へ
高く。
高く。
そう もっとね
ええ、いいわ
あそこを飛び越えるくらい
高く。
高く。
堕ちていきたいと願った
絶望が心地よい夜
そっと
『高く高く』
「なんかさ、
子供みたいにわんわん泣いて
子供みたいにきゃっきゃっはしゃいで
鬼ごっことか、かくれんぼとか、木登りだって
子供みたいに甘えん坊で、泣き虫で、
よく、笑う。
そんなのが出来なくなったよな」
「大人……ってさ、
なんか、思ってたのと、違うんだよね
お金もっててさ、おしゃれな趣味持っててさ
パートナーがいてさ、仕事も大変だけど、
人間関係は良好で、帰りにはご褒美のデザート
なんて、なかったよな。なんか、」
「なんか、
高校生の時も同じこと思ってた気がする。
帰りにコンビニ、スタバ、
日帰りディズニー、
青春の部活
居残り
仲良い友達
定期テストのための勉強会
夏休みはバイト
なんて、無茶な夢見てた」
「昔は本当に、ほんとうに、
中学生が、高校生が、大人が、
キラキラしてたんだよ」
「現実を知ったら、
灰色に覆われていて、
もう後戻り出来ない。」
「子供に、戻りたい。」