……どこだここ。
私は迷子になってしまったみたいだ。
目から入ってくるのは情報は、動かない信号機と、消えかかった白線。
その光景にぼうっとしていたら、後ろからドンッと衝撃がきて、声がした。
「おい、早く渡れよ。」
「ごめんなさ……」
私は後ろを振り返ってその声の主を見ようとした。
そうしたら、私の目に入ってきたのは信号機だった。
信号機が動いた?いや、信号機が喋った?
なんだろうか、妙な胸騒ぎがした。。
あ、これ夢か。
そう自覚した瞬間、曖昧な夢の風景は白くフラッシュを炊かれたように消え、意識が遠のいた。。
ふぁさっ、っと机の上になにか紙が置かれたのがわかった。
私は目を開けた。
ゆっくり体を起こし、軽く伸びをした。
「やば、休み時間もう終わり?」
休み時間……そうだ。私は休み時間に仮眠をしていたんだった。
とたん、上から声が降ってきた。
「安曇、進路の紙早く出しなさい。」
声の主は担任の先生だとすぐわかった。
「はぁーい」
めんどくさい。
進路とか、分からない。
窓から差し込む光と、窓から見える交差点を見て、また、仮眠した。
『未知の交差点』
どう思う?
パラレルワールドってさ、私の可能性の全てが広がっているってことだよね?
パラレルワールドなら私がフィギュアスケートで舞い踊る世界線も、ヒヨコ鑑定士で業界トップになる世界線もあったわけだ。
もしも、もしも?私が男だったら?
もしも、私が猫だったら?
人間じゃないなにかなら。
もしも、生物でもなく、無機物になっていたら?
私という存在は、何なのだろうか。
『パラレルワールド』
『こぼれたアイスクリーム』
――カランカラン、と古びた引き戸が開く音。
「おばちゃん!アイスクリーム1つ!」
まだ声変わりの途中の、高く弾む声が店の奥まで届く。
棚の影から、腰の曲がった“おばちゃん”が現れる。
「あいよ〜」
小さな手が指さすのは、冷凍ケースの中で眠る棒アイス。
おばちゃんは蓋を開け、キンと冷えた空気と一緒にアイスを差し出した。
少年はポケットから小銭を出す。チャラチャラと、金属の音。
それをおばちゃんが受け取った瞬間――
ポトリ。
手から滑り落ちたアイスが、真夏のアスファルトにぶつかる。
溶けかけた白がじわじわと黒い地面に広がり、
さっきまで涼しげだったその色が、急に儚く見えた。
少年は一瞬固まって、唇を噛む。
おばちゃんは、ふっと笑った。
「…もう一本、持ってきな」
冷凍ケースの蓋がまた開き、キンとした空気が流れ出す。
蝉の声が、やけにうるさく聞こえた。
8月、夏休みの真っ只中
この茹だるような暑さの中僕は清涼の地を見つけた。
君と、クリームソーダ。
君を見つけた。スカッとした風が僕の横を通って行った気がして少しヒンヤリした。喫茶店の窓から見える君に少し手を伸ばす。
窓越しの君は伏し目がちで良く似合うティースプーンを使ってクリームソーダを食べていた。
喫茶店のドアのベルを軽快に鳴らしながら清涼の地に入る。
君が見える席をとった。
君に気づかれたくて、少し目をやった。
雷が落ちたかのように目が合って、すぐ逸らした。
時計の針が静かな喫茶店にうるさく響く。
君の息遣いのひとつさえも聞こえてくる。
空気を切り裂くようにツンと鼻の奥に入ってきたコーヒーの香り。僕のテーブルに運ばれて、カランコロンと氷の音が心地よく聞こえる。
『8月、無口な君とクリームソーダ』
シンとした冷ややかな空気が心地いい。
暖かな毛布にくるまった私は「その時」を
じっ……と。待っている。
後3ヶ月か2ヶ月か、
もしかしたら1ヶ月かもしれない。
楽しみだなあ
みんな綺麗だよって言ってくれるかな
私はチューリップ。
まだ、「その時」でないことは分かっている
だが、私は「その時」ピンクの花弁をつけるらしい
「その時」の為に、長らく土に潜っている。
近くを通るミミズさんに挨拶をしたりしながら過ごしていた。
「いつもお世話になってまーす!」
返事はきたことないけど、たぶん伝わってる。
ちゃんと栄養満点の土になってる。
人間さん!「その時」……
いや「芽吹きのとき」までアナタも!
腐らずに待っていてね!
『芽吹きのとき』