「さっむーい」
「仕方ないなあ、ほら俺の手であっためてやるよ」
駅のホームで朝からいちゃいちゃして、楽しいのかしら。……まあ、楽しいのでしょうね。
寒ければヒートテックにカイロに防寒着ましましにしてやればいい。生足出そうとか、そんな元気のいいJKじゃない。こちとら受験でピリピリじゃい、と……。
でも、人のぬくもりであたためて貰えるのは……また違った温かみがあるんだろうな。
ひゅーーー
「さむ」
今日は手ぶくろを忘れてしまった
何とかしようとカイロの入ったポッケに手を突っ込む。
「あったか……」
「おい、手ぶくろないのか」
「おい、お前だよ」
え、私?とジェスチャーをして頷かれたので
「急に何?」
と、素っ気なく返した
制服は同じだけど、知らない人。
「はい、まだ新品だからやるよ。
転んだらあぶねーだろ」
「はぁ……」
まじでコイツは誰なんだろう
そんな私の困惑を待ってはくれず
「じゃ」
と一言いって手ぶくろを私に押し付け逃げてった
「……」
「ふふっ」
ちょっと可笑しくて笑ってしまった。
本当に新品そうな感じがする
はめてみると、あったかい。
翌日
「ねぇ、手ぶくろありがとう」
手ぶくろをした手で、
知らないアイツに手ぶくろを返す。
「あの……ん……その、手ぶくろ友達としてLINE交換しねーか」
「……」
「あははははっ
また意味わかんないことっあはははっ
なによ手ぶくろ友達ってあはっ
一方的に貸してきただけじゃんあはははっ」
「わ、笑うなって」
「だってーあははっ
まあーいいよ、その勇気に免じてLINE交換しても」
「まじかよ!じゃなくて、えー……サンキューな」
「クールぶらなくてもいいのに」
「るせーよ、困ったらLINEしろよな」
「ねー桐生ー今日は手ぶくろ忘れちゃったー」
「あ。俺も忘れたわ」
「まじかー今日は桐生から
借りようとしてたけどダメかー」
「……手、繋ぐか?」
「はーいダメでーすまだ繋げませーん」
「な、人の勇気を蔑ろにしやがって」
「勇気だけじゃダメなこともありまーす」
「じゃあ寒さ忘れるように入試対策の問題出すわ」
なんか、不思議な感じで出会った私たち
いつの間にか一緒に学校に通う仲に。
まだ手を繋ぐっていう勇気は私の方にはないから
雪が解けたころまで、待っててね。
『手ぶくろ』
「愛してるって言ってよ!!」
格子越しに聞こえてきた彼女の言葉
もういい加減この変わらない景色も飽きてきた
ずっと檻の中は何となく寒い
「うるさいよ。もう、いいんじゃない?」
彼女の顔は青白くなっていく
でもすぐにムッとして
「私たち何年もずっと一緒だったじゃん!
なんで急に突き放すの!!」
彼女の甲高い声は反響し何倍にも返ってきた
限界だなぁフッと思った
「別れようよ」
は?なに?ねぇ!?
たっくん、前のたっくんに戻ってよ!!
そんなのが聞こえる気がするがまあいい。
僕はこんなこともあろうかと檻の鍵のスペアを作っておいたんだ。
ガチャ
あっさりと鍵を開け、膝から崩れ落ちる彼女を横目にこう言った
「好きだったよ、まーや」
そしてこう続ける
「でもね、今は好きじゃない。」
「分かった。」
彼女はゆっくりと立ち上がり包丁を取り出す。
まあ、彼女の性格を考えればそうなるのは理解出来る。
「変われよ。
僕は変わった、変わらないものは……ないよ」
ぷるぷると震える包丁、俯いていて彼女の表情は見えない。
「うん」
そう零した彼女は僕に迷いなく近づいてくる。
そして包丁を胸に向けた
「私もたっくんのこと好きだった。
今、嫌いになったから」
なにか憑き物が取れたようだ
爽やかな声でまっすぐ目を見て彼女はそれを伝えた
「別れよう、もう一生逢わないように」
じゃーねと手を振る彼女の右手にまだ包丁があるが、多分大丈夫だろう。
警戒しながら背を向けた
ドっ
背中に衝撃が走った
それは……暖かい彼女の手だった
「早く行け!このあんぽんたっくん!!」
どうやら彼女、まーやは変わったようだ。
『変わらないものはない』
あ、好き。
ってそうなっちゃうから
盲目的に貴方しか見れなくなったから
あなたと距離をとった。
でも、会えない分だけ愛が積もってく
恋愛ソング、聞くのこれで何回目?
発散できない愛が私を寝かさない
心臓がギュってなって
好きと叫びたいのをグッと抑える。
ある日あなたがいきなり距離を詰めてきた
いつも通りの無邪気さで私のハートを射抜く。
あなたが子犬の写真を私に見せた。
ああ、ホーム画面……彼女さんなんだね
もう私に話しかけないでよ
あなたに愛をあげられないから。
もう……冷めたよ
心の穴を埋めたくて猫を飼った。
少しずつ
少しずつ
愛を込めて育てる
育っていった愛を君に注ぐよ。
『愛を注いで』
好きな人が距離を詰めてきた。
えっなに急に???
平静を装うけど、頭ん中はグルグルで
私が何を言っているかも、もう分かんない
わっ!?
少し腕が当たっだけでガチゴチに緊張してる
熱い頬触って、何でもないフリ
『何でもないフリ』
仲間って、なに?
「私たちこれからも仲間として頑張ろうね!!」
そう交わされた言葉
最後の最後でミスをしたわたしは
それに元気よく答えられなくて
「う、うん……」
って曖昧な返事をした
静寂なオレンジコート
転がるバレーボール
まだ最後じゃないけど、先輩にとっては最後の……
だから、もう耐えきれなくてトイレで1人泣く
そして聞こえた声は
心を沈ませる
先輩の最後の大会がアイツのせいで台無し。
あそこでミスるのは練習不足。
本気だった笑?
そんな声
ああ、私の居場所はないとわかった
足音が消え、トイレを出る
「あ、お疲れー!!みんな悔しいね!
今日は焼肉でもどう?」
「いいね!私達最高の仲間だったし!」
ふーん
最高の仲間……ですか。
仲間って……なんですか?
『仲間』