【カレンダー】
アイツの頭の中のプライベートのカレンダーは、サッカーの予定で埋め尽くされている。
いくら好きだから、仕事にもなってるからって、あんなにおんなじスポーツを延々と観てられるモンなのか?
週末の昼間は日本のサッカー、夜中はヨーロッパのサッカー、それで時々は代表の試合が挟まり、女子サッカーも観て、平日は見逃した試合を追ってる。
そんなお前のカレンダーにおれの予定は書き込まれてないの?
今夜もサッカーに夢中になっている、その背中を蹴飛ばしてやりたい。
【世界に一つだけ】
色違いのお揃いで作ったオーダースーツ。
ペアで買った帽子。
二人で作った曲。
互いのイニシャルを刻んだ指輪。
それから、誰も知らない二人の関係。
【胸の鼓動】
高まるそれを何と言うのか、俺は知らない。
君を見ると、高まる何か。
熱く迸る感覚を何と言うのか。
君が八重歯を見せて笑っていた幼い日から、憂いを含んだ端正な横顔でグラスを傾ける今も、俺はそれを感じている。
高まるそれを何と言うのか、俺は知りたい。
【踊るように】
踊るように夜を共にして、歌うように朝を迎えて。
おれらは希代のエンターティナー。
鮮やかなひと時を過ごし、そして華麗に幕をおろすんだ。
夢は続かないから楽しいんだよな。
白い朝のヒカリを瞼に感じながら、おれはオマエの腕を枕にしていた。
素敵な夜だった。
オマエがおれに「愛してる」って囁いて、魔法がかかったみたいに心が震えた。
次に目を開けたら、魔法は儚く消え去り、おれはなんでもなかったように軽やかに笑って、踊るようにオマエの元から去るだろう。
【些細なことでも】
ほんのちょっとした日常の些細なことでも、君となら空前絶後の素晴らしいロマンチックなイベントになる。
だから軽くは誘えないんだよ。
新しいラーメン屋とか、人気のサウナとか、普通のところには。
全然誘ってくれないと、隣で膨れっ面の恋人に言い訳する。
理由にならない、とクッションを抱えて不満そうな恋人は言う。
些細なことだからいいんじゃん。
いまさらロマンチックはいらない。
オマエにそんなこと似合わないし?
普通のなんてことない所に一緒にいたい。
──ひょっとして、プロポーズされたんだろうか。