神様だけが知っている
ぐらりと空が歪んだ。
なあ、1年後俺らどうしてると思う?
口にするのも躊躇われるようなセリフ、
何があっても自分達の関係性に変わりはないだろうと無根拠に信じていた。
どれだけ強敵が現れたとしてもそれは『やつら』が何とかしてくれるだろうし、自分達が呼ばれるようなことは無いと踏んでいた。
彼の行動には彼なりに事情があった。
彼の構成の1人である○○はひとり親の祖父に大層可愛がって育てられた。両親からは離れていたがその事を思い出したのは成人してからである。
しかしもう1人は幼少期から親元を離れ、そのことを内に秘めたまま独り戦士として働いていた。
同僚についてはあくまで同僚で、そこに甘えなどはなかった。
どちらも不満を感じることはなかったが、ある日2人がひとつの肉体に合わさった時、問題は起きた。
そう言って念ずればすぐさま衣服が変わっていく。
純白のブーツはスニーカーへ。動きやすさを重視した道着は、対照的にピッタリと体の線が浮かぶジーンズに。半衣はゆとりのあるスーベニアジャケットに変わり露出されていた腕は光沢のあるジャケットの布地にゆったりと覆い被せられてしまって鍛え上げられた体躯は見えなくなった。
「おお、これ神様の好み?」
手袋を失ってむき出しの手のひらを眺め、ジャケットの裾を捲りながら訝しげに自身の着衣をまじまじと見ている
「馬鹿なことを言うな、おまえに似合うものを誂えた」
ふーん、と鼻を鳴らし、それって同じじゃない?と言いたげな顔をしているが断じて違う。
『でもさ、俺思念体だし、ここ神様の頭の中だから。全部神様の妄想だぞ?』
頭の中で何かが爆ぜるような感覚がした。
目の前の僕はいつものように口角を釣りあげニヤリと笑った。なんてことない純新無垢な笑顔。
だがそれはいまとなってめいっぱいの不気味さを孕んでこちらを真っ直ぐ見つめている。
瞬間、
ぐにゃりとその姿が歪み始める。
ああ、あ、あ
次の瞬間起こることを本能的に察知した私は固く目を閉じその場に屑折れた。
地面に伏せた私の頭上、すぐこそでばしゃん、ばしゃんという泥を叩きつけるような音が響く。
時折粘度のある重たい液体が顔に飛沫する。
消して目を開けては行けない。そう頭の中で警鐘がなるが先程までそこにあったそれが、愛しいそれが、日常であると信じたそれが目を開ければそこに平然とあると信じたい一心でゆっくりと目を開けた。
「貴様はその色が好きなのか」
山吹色のインナーに紺碧の道着を見て感想が口をついた。
「そういう訳じゃないが、あいつらはずっと同じの着てたから愛着はあるだろうな」
あいつら、とは素体になった2人のことだ。
ブーツや手袋も素体の身につけていたものと同じだ。
「別にこの服じゃなきゃいけないわけじゃない、ただ他のを着る気にもならないだけだ。」
「そうか、ならばたまには違うものも着るといい」
そう言って念ずればすぐさま衣服が変わっていく。
純白のブーツはスニーカーへ。動きやすさを重視した道着は、対照的にピッタリと体の線が浮かぶジーンズに。半衣はゆとりのあるスーベニアジャケットに変わり露出されていた腕は光沢のあるジャケットの布地にゆったりと覆い被せられてしまって鍛え上げられた体躯は見えなくなった。
「おお、これ神様の好み?」
手袋を失ってむき出しの手のひらを眺め、ジャケットの裾を捲りながら訝しげに自身の着衣をまじまじと見ている
「馬鹿なことを言うな、おまえに似合うものを誂えた」
ふーん、と鼻を鳴らし、それって同じじゃない?と言いたげな顔をしているが断じて違う。