私の手元から離れていく小鳥を、鳥かごに入れておくことは傲慢なのだろうか。綺麗なものを愛でていたい、自分のものが勝手に飛び立っていくのを許せないと思うのは、本能なのではないのか。
いつまでも可愛らしく鳴いていて。空を奪われた、私の小鳥。
友情って、こんなに苦痛が伴うものだったっけ。
僕抜きで帰る君が、こんなに恨めしいものだったっけ。
一緒にいたい想いが、こんなに苦しいものだったっけ。
ほんとは分かってる。世間一般にはこれは友情とは呼ばないこと。
でも君がこれを友情だと言うから。僕のすべては君だから。僕のこの苦しみは友情なのだ。
だからね、あまり僕を刺激しないで。
思い違いを起こしてしまいそうになるから。
ねぇ、最悪だなんて言わないでください。
確かに私達、噂では色々言われてますが、別に取って食ったりしないですよ。
貴女が私の家に寄りたいと言ったのではないですか。
暑いからと服を脱いで、1つしかない寝具に潜り込んだのではないですか。
それなのに私をケダモノみたいに!
...でも、最悪だと言いながら、そんなに嫌がって見えないのはどうしてですか?貴女こそ耳を赤くして、期待したのですか?
このまましばらく勘違いさせておいても、面白そうですね。いつもあしらわれている分、少しからかってもバチは当たらないでしょう。
誰にも言えない秘密って、あなたにはありますか?
昨日こっそり寝る前にアイスを食べたこと?
彼女の友達と浮気していること?
昔、人をいじめていたこと?
人を殺して埋めたこと?
私の秘密、あなたにだけ教えてあげましょう。
私、実は死んでるってこと!
狭い部屋の窓辺で、ロッキングチェアに座る君は退屈そうだ。
いつも同じ本を繰り返し読んでいるが、なんの本なのか。いくら新しい本を買ってきても、次の日の朝にはその本を読んでいる。ブックカバーの着いたその本に何が書かれているかは、いまだに知らない。
「なぁ××。」
声をかけると少しムッとして、君はパタリと本を閉じた。
「なんですか」
「…少し、ドライブしないか?」
ドライブという言葉に明らかに機嫌をよくする君。
準備してきなよと声をかければ、本を椅子に置き、嬉しそうに洗面所に向かって行った。
ふと不意に、椅子に置かれた本を手に取る。少しだけ日に焼けたそれには、緑のブックカバーがかかっていた。
中を見ようとしたそのとき、洗面所から呼ばれる。また中を見れなかった、と残念に思う。
ドライブの途中で、本の内容について聞いてみよう。
そう決めて、本を置き、部屋を出た。
人が居なくなった部屋に風が吹き込む。風でぱらぱらとめくれたその本のページは真っ白。
何も書かれてなどいなかった。