狭い部屋の窓辺で、ロッキングチェアに座る君は退屈そうだ。
いつも同じ本を繰り返し読んでいるが、なんの本なのか。いくら新しい本を買ってきても、次の日の朝にはその本を読んでいる。ブックカバーの着いたその本に何が書かれているかは、いまだに知らない。
「なぁ××。」
声をかけると少しムッとして、君はパタリと本を閉じた。
「なんですか」
「…少し、ドライブしないか?」
ドライブという言葉に明らかに機嫌をよくする君。
準備してきなよと声をかければ、本を椅子に置き、嬉しそうに洗面所に向かって行った。
ふと不意に、椅子に置かれた本を手に取る。少しだけ日に焼けたそれには、緑のブックカバーがかかっていた。
中を見ようとしたそのとき、洗面所から呼ばれる。また中を見れなかった、と残念に思う。
ドライブの途中で、本の内容について聞いてみよう。
そう決めて、本を置き、部屋を出た。
人が居なくなった部屋に風が吹き込む。風でぱらぱらとめくれたその本のページは真っ白。
何も書かれてなどいなかった。
6/4/2024, 5:46:07 PM