かすかな浮遊感が苦しくて
ねむれない夜にふと目を開ける
にじむ寒気と街頭の喧騒
僕らは深い夜を迎える
らんらんと唸る低い残響
はぐれた言葉も見逃がさない音
連られた迷子を外に誘う
れいきが肺に棲み着いた
らしくないなと笑ってしまう
れいこくに訪れる百七回目
るりに紛れたオリオンの下
遠い鐘の音、最後の鐘の音
くやんでも時は流れてしまう
へいぼんな日々が焼き払われて
とけいの針が線を結んだ
このまま境界線は消えていく
ここには全てを残していけない
にこやかに皆朝を迎える
いい出せなかった本音を置いて
るつぼにハマった人生なんだ
こうして夢すら喰われていくんだ
ともすれば、次に目覚める僕は
はみ出した、なら、もう。
ゆりかごの中
るり色の天幕は桃へと移ろう
さいた牡丹に白が落ち、吸われた
れいめいの彼方に曲線を浮かび
なれない眩しさに目元が弛む
くらやみを溶かすように、日が
てんとうしていく
初めまして、僕は人です
宜しく。仲良くして下さい
あら、君は感情豊かですね
僕は感情が豊かなんですよ
顔に書いてるでしょう。あれ、どこにも見えませんか?
趣味?あぁ、なんだろう
あまり思い浮かびませんが、思考に潜る事なんですかね
君は?考えること?へぇ、そんな趣味もあるんですね
どんな感覚ですか?知らないことを想像するのが楽しい?
そうなんですね。僕は、知ってること以外に気を回す事が好きなんです
人って、色んな人がいますよね
全然あまり、理解は難しいなぁ
夢はありますか?指標とか。
はは、あるんですか。いいですね
なに、人に負けないこと?人振り払って叩きのめして、我が道突っ走ってくことだって?
あぁ!!僕もです、僕らおんなじだ
僕には夢は無いんです。追っかけたって価値無いでしょう
力入れるのも面倒だ。弱いんなら、他力本願であるべきだ
幸運の雨が降るのを待っていたい。だって何になりたいとか選択だとか、何選べやいいのか分からない
その点僕らはよく似てる。でしょう?
君は幾千の夜空を超えてやって来た。この星に
僕はその全容を知らない。君も、僕の見た日常を知らない
例えば、子供が練習する用の箸を親戚に買ってもらったこととか、弱さを包み隠す為声を大きくしていたこととか
これらは些細なこと。語るべくもないこと。
君だってそんなの持っている筈。しかし、これらは僕らをくすませた色彩だ
それは捨ててはならない。絵画を傷付けるのが極刑なように。それを知っているからこそ、戸惑う
絵画が絵画を傷付ける場合、なんて言うのが善いのだろうか
言わないことが正解か、それとも。
そうと悩む内。君は手を振り、背を向けた。
あは。またミスったのか。僕は、
最後の日。ぽっと、懐かしい言葉が頭に浮かんだ
「人はあたたかいよ」
思わず往年の記録に耽る
あの頃の自分は確か、心に自分をよく軟禁したな
昔は自分が居ない方が都合が良かった
別に完全に拘束していたって訳でないけど
なんでも全ては、制御下にある方が便利だ
ただ出会いの運には良く恵まれたらしいから、ちょくっと友人が遊びに来てくれた
あの人は変で不可解だった
面倒事には首突っ込むし、苦しむ人には同情する酷な性根、挙句人の為人の為と自分の為に傷付いた
阿呆って言うんじゃないのかなぁと思ったけれど、何より、
都合のいい言葉、甘言を吐くのが上手かった
優しいって言うんじゃないかと思う
救われた気に浸った
でも、直ぐにそれも去ってった
あぁこうやって平穏に落ち着くんだなって、どこか黒い目で安心したな
よかったな、人はやはり人なのだ
ありがとう、遥かの友よ
情操だけを教えてくれた
スキルを得るのは良い事だ、希望なんて望めなくても
時折頭を掠める、人の為らしい無意味で白い溜息も。人を見るようでいて目の中の自身を見てるような仕草も。
もう二度と、出会いたくなんざないからさ
雪原の先へまだ向かう
ほんとだね。血が巡るのは温かいんだ
舞うように、ただ舞うように
雑草を踏み潰してでも
この先なんてどうでもいいんだ。進む為だけに進めれば
君だってそうしてたでしょう、頑張る人である為だけに頑張った
愚かなんだ人は。愚かだから人だ。
愚かになりたかったんだ。愚かであるが為に振舞った。
こんな終わりも愚かでいいんだ。多くの人はそうだから。
自分の死を、意味があるものに。それだけを、それだけの為に生きている。
ならばそれに則って、意味の無いという意味を与えた死を得たい。
どっかの部品は破損させた。理由もないのにただ進んだ。生産理由にそぐわぬ言動をした。
君に貰ったこの自棄を
二度と新たに生み出したくない
それだけだったんだ
次起きたら、そうだな
なんか、食べたいな
夜中
ビルや電飾がやたらと目につく
夜は暗くない
文化の発展と人々の成果
結果、頭上に星は無い
歩道橋から見た道路
赤と白が入り交じる
どこか急流かの如く
自分は、まるで顕岩のような
足を速めた筈
筈だけ
家々を前に縫って行く
星みたいだな、と浮かぶ
きらめく街並み
失せた輝きに成り代わった、そんな。
ず、と。息が遠のく
狭苦しい
線路が途切れた
見慣れた道を踏む
閑静
然れども眩む
どこまでも、目を閉じれど開けど
いつまでも
眩しさは脳をじりと焼く
今日は上手く寝かせてくれと
消えない灯りは応えない
「あ、そやさ、これどう思う?」
なんとはなしにと装い問う
今自分はなんと言ったっけ、あぁそうだ
孤独な鯨の話の続きだ
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【世界で最も孤独なクジラ】
それは80年代辺りから観測されている、奇妙に歌うクジラ
クジラは大抵10〜39Hz程の低周波数で鳴く所、この個体は52Hzといった脅威的な周波を操る類まれなる存在だ
他と大きく異なるその声は、誰にも認識されることは無いのではという推測からこのように呼称されている
その形貌は現在至るまで確認されておらず、今も広大な太平洋の海のどこかを悠々自適に漫遊している
尤も、個体数や本当にコミュニケーションが取れないのか、様々諸説はあるそうだが
「鯨ってさ、孤独とかなんのかな」
眉ひとつ動かさず平然と呟く
考え得る反応はこうだ、共感もしくは無反応や当たり障りの無い言葉
その他なら程よい素振りで対処しよう
己で身勝手に口に出しておきながら、次の一手の算段を立てる
別に何か討論をしたかった訳ではない
かといって何かを強く求めた訳でもない
聞いて欲しかったかどうかすら、よく分かっていない
一つ言葉に嵌めるなら、言いたかったのだ
届かないだろう、構わない、そうなるように言葉にした
ただ、孤独を、空気の震えに押し付けたかった
それも見たこともない生命に重ねて
心根なんて対人関係に持ち込む利点は余りない
だから縋った、寒風がこの荷重を浚い憶えた儘でいるように
その先でどうか眼前に在るこの友に、ふと引っかかってはくれないかと
我ながら褒められたものでは到底ないと酷く思うが、バレなければ罪ではない、といい
秘密の手紙を認めるように心を置いて、また意味もない駄弁を再開した
またどこか少しだけ、鯨に自分を重ねる