しば犬

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9/23/2024, 6:45:05 AM

煌びやかに夜空を彩る星空
頭上から優しげな光を落とす満月

月光に照らされ、青白く光り輝いた
一面に広がる白いアネモネ

川の流れる音が聞こえ振り返れば
白い見事な橋がかかっていた。
あまりに大きい川なのか対岸を見ること出来なかった

幻想的な光景が広がるここを僕は知らない。
気がついたらこの場所で寝ていた。
既視感のあるそれらは、絶対に同時に存在することなど有り得ない。
だからこそ、心地がいいのかもしれない。
暑さも寒さもない、肌を撫でるそよ風が心地よくいつまでもここにいたいと思う。

川を渡らなければならないと思うが、もう少しだけここで寝ていたい。
朝日昇ったらあの橋に向かおう。



いつまで経っても、日は昇ることは無かった。
来た時に感じていたそよ風も川のせせらぎも聞こえない。
ただ、静寂だけが僕を包む。

目を閉じる。そして僕を呼ぶ声が聞こえる
「声が聞こえる」

9/11/2024, 3:44:08 AM

後悔はない。
悲しみもない。
この判断は間違っていないと言える。

ベランダでタバコを吸いながら言い聞かせるように反芻する言葉の数々

2日前までこの家は活気が確かにあった
心地のいい雑多の音が無くなるだけでこんなにもこの家が広いのだと実感してしまう。

付き合って、同棲して、結婚の約束もした。
多少のすれ違いも、喧嘩も有りつつ良好な関係だった
少なくとも僕はそう思っていた。

浮気するヤツは許さないとは思わない
だが受け入れることも難しく、感情のコントロールが上手くいかない。

向こうも悪いが、きっと自分が悪い
大切に接してなかったのかもしれない
愛をちゃんと伝えてなかったかもしれない
一緒にいても楽しいとは思えなかったかもしれない
8割ほどはきっと僕がわるいのだ、この決断を含め。
自己嫌悪が僕を襲う。

冷静に考えれば、好きという感情も愛してるという気持ちもなかったのかもしれない

肌を撫ぜる風が、ぐちゃぐちゃになった思考を冷静にする。
ぽっかりと体の中心に空いた穴は、悲しみでは無いことを知っている。
これは、きっと間違いなく、喪失感というものだろう
飲みかけの酒を煽り、持つ1本タバコに火をつける


『喪失感』

8/21/2024, 5:48:00 AM

気がつけば、雀が鳴いている
窓からは薄らと朝日が入り始めていた
頬を伝った涙の跡と崩れているメイクが
私を道化のように彩る

どんなに悲しくても、お腹が空く
空っぽの冷蔵庫を見てコンビニに行く
外見を気にする気力も無い

早朝ということもあり、人には出会うことなく
コンビニに着いた
彼が好きだったおにぎりと飲み物を買い
空腹に耐えきれず、帰り道で食べた

大して味もしない
とりあえず飲み物で胃に押し流す


彼がいる病院に行かなければ、最後に言った言葉を聞くために

『さよならを言う前に』

8/20/2024, 4:11:57 PM

吸った煙草の煙が晴天の空に消える。

吐き出す煙が1度として同じ形をとることは無い
吐き出された煙がそこにい続けることは無い

そんな事を思いながら、タバコの灰を落とす。
燃え尽き灰となった所が灰皿の中にぼとりと落ちる。
途方もない喪失感を煙草で誤魔化す。

1週間前に親友が自殺した。
自殺する2日前にあった時は、元気だったしいつもの様に笑ってた。
そんな彼が、ビルから飛び降りたのだ。
勤めていた会社の屋上から飛び降りたらしい。
屋上には、彼の靴と遺書が残されており自殺したのは間違えようのない事だった。

葬儀は淡々と進んだ。
僕は涙とを流すことも、悲しみに押しつぶされるようなこともなかった。
ぽっかりと心の臓を抉られ風穴が空いたみな感覚がいつまで経っても消えることは無かった。

最後に会った時の会話がふと蘇る。
「なぁ、知ってるか?焚き火の揺らめきと波の満ち引きは永遠と見てられるんだってよ。同じ形が1度としてないかららしい。
でもさ、同じ形が1度もないって言うなら空も人は永遠とみ続けられるよな!」

「たしかに、僕が煙草の煙を好きなの理由はそれかもしれないね」

「海も川もキャンプもしたからさ、今度は山登り行こ。
谷川岳辺りにしよう。あそこの空が好きなんだ」

「あぁ、道具を買って準備しておくよ。再来週にいこう。」


気持ちに一段落が着いた、風の強い晴れたある日。
彼と約束した山に行くことにした。

山頂でみた空が心の虚空を少しだけ埋めてくれた気がした。
「君が好きな空は、こんなにも移ろいやすく綺麗なんだね」


『空模様』

8/16/2024, 12:32:17 AM

見渡す限り真っ黒い海

1週間前に彼の浮気で全てが壊れた。
幸せだった記憶は、心を縛り締めつけた
生きる気力も涙と共に消えさり
失うものは無いと好きだった海に来た。

沈みゆく太陽を追うように空を厚い曇が覆っていく。
煌々と輝く月明かりも星もない
明日への道標も希望無い。

心にも目の前にもあるのは暗く深い孤独と絶望。

肌に纏わりつくような潮風
沖へ誘うように響く潮音
ゆっくりと立ち上がり、持っていた錠剤を酒で胃に流し込んだ。

1歩、1歩と海に入った
冷たいと感じた海は、胸まで浸かると温かく感じる。
波は優しく私を抱きかかえ沖へと運ぶ
母のような抱擁と暖かさで。

静かな沖へとクラゲのように揺蕩う
薄れゆく意識とともに体は沈む

次はクラゲになりたいな……


『夜の海』

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