この世にもしもなんてことは無い。
時間、場所、人、天気、どれをとっても戻ることは無い。
だから悔いのない選択をしなければならない。
でも思ってしまう......
「もしも......」と
もしも君があと10歳若かったら
もしも君が同じ町に住んでいたなら
もしも君と出会うことがなかったら
もしも君がこの世界に存在しなかったら......
きっと僕はこんなに苦しまなくて済んだのに
きっと僕はこんなに幸せを感じることはなかっただろう
だから、もしもと思わずにいられない
はぁ、今日で三十路......
1年がすぎるのは早いなぁ笑
夢も希望も彼氏もなーんもない
いつかを願って、いつかを信じて、いつかに希望を抱いていたのにそんな力はもう私には残ってない。
いや?あったかさも怪しい......
通例でやっている誕生日も意味なんてないし、誰に祝われてもいない
でもこれを辞めたら本当に何も無くなってしまうような言いようのない不安がある
現状維持は心地がいい
新しいのは、変化は......怖い
あの日夢見ていた少女は、未来を恐れる大人になってしまった
蛹は年を経て、孵化をした
翅の寄れた醜い蝶は夢見ていた空を舞うことなく、地に伏せ這いずる
私は何をしたらいいの?私は何にすがればいいの?
きっとあの時から全てが狂ったんだ
そう言い聞かせないと、無理だ
救いのないという事実が心を支配する
死こそ救いと言ったのは誰だったろうか
時間だ。仕事に行かなくちゃ......
ずーっと夢を見る少女でありたかったなー
高校の頃からの友達から急にLINEがきた
「暇?今からさちょっとドライブしない?」
時計を見ると20:32。
特に予定もないし......明日も、明後日も暇だ。
やることもない。仕事もない。生きる理由もない。
誰も相手にはしてくれない......こいつだけはずーっと連絡をしてくるし飯にも誘ってくれる。
私みたいな奴といて楽しいのだろうか?なんてつまらない思考が頭をよぎる。
とりあえず、「暇だしいいよー」と返信はしておいた。
既読がすぐについて、いつもの陽気なスタンプが返ってくる。
何となく、綺麗にしておいた方がいいと直感が告げる
ボサボサの髪を整え、あいつが綺麗と言ってたハーフアップにする。
メイクはしないけど、リップをつける。
車の音がした、あいつの車だ。
玄関先で待っていたから音でわかる。いつも通り唐突に連絡が来て、到着予定時刻に遅れず来るところがアイツらしい。
「よう、ドライブ行こうぜ!」
少しは容姿について何か言ってくれてもいいんじゃないか?と思いつつ、助手席にのる。
「今日はさ、湖に行こうと思うんだよね。なんかYouTubeでみてめっちゃチルいなーって思ったからさ」
犬みてぇーだなと面白そうという気持ちが混ざって変に素っ気なく返事をしてしまった......
1時間近く車を走らせてる間、飽きずにアイツは近況報告だったり頭を大して使わなくていい話をした
何気ないけど、そういうところが居心地いいよなー
「ほら、着いたよー!!!」
満点の星空、風と水の音。たしかにチルい......
「月が綺麗じゃない?」
空を見渡しても月なんてない。何言ってんだと思ったが
合点がいった。まぁ、こいつとなら死んでもいいなーなんて
星のあかりが私たち二人をそっとてらしている
そんななんてことの無い1日、一瞬がずーっと続くのも悪くないな
桜の咲くこの時期は出会いと別れを連想させるし実際のところそうなのだろう
かくいう私もそのひとりなのだから
高校から付き合ってた彼とも先日別れた
大学生になった私と社会人になった彼
些細なすれ違いが喧嘩を呼び
余裕の無さが、そのズレをより大きくした
あの時こうしたら、あんなことを言わなければ
そんな後悔も今となっては取返しなんてつかないというのに。そんなもしもを考えては、布団に顔を埋める。
何も食べたくは無いが、お腹はすく。
冷蔵庫には何も無い、ストックしてある保存食もない
宛もなく、家を出た
気がつけば、スーパーでもコンビニでもなく
彼とよく行ったお店の前にいた
「いらっしゃいっ!!お?嬢ちゃん久しいね」
煩いくらい元気な声の挨拶
人の前に出るには不格好な私を見て何かを察したのだろう。気まずい様な顔をした店主にいつものを頼んだ
「特製ラーメン、ネギ増し味玉トッピングメンマ抜きお待ち!あとこれはサービスだよ。」
いつものラーメン。そしてラーメンに似合わない桜餅
「何があったか知らないけど、腹いっぱい食べな。」
暖かいスープが胃袋を潤し、細麺と桜餅が空っぽになった胃を満たしていく。心に空いた穴を埋める様な感覚がゆっくりと広がる。
気がつけば、店主に彼と別れたことを話していた。
「まぁ、なんだ......春ってそういうもんだよ。でもな雨が降ったら、次は晴れるんだよ。冬の後には春が来るんだ。辛くなったらまたおいで。ラーメンしか俺には作れないけどさ」
お店を出た私の前に遅咲きの桜の花びらがひとひら落ちる。
春の終わりを告げ、新緑を宿す桜が私の背中を押した気がした
『ひとひら』
「曇り空って嫌いなんだよねー」
隣の彼女は言う。理由を聞きくと空から僕に視線を移し
「なんでってそりゃー、青い空が見えない……から?」
疑問系で返すなよ……
「君にひとつ教えておこう!私はね、蒼が好き。晴れてれば、海も空も山でさえ青色に染まるんだよ。」
見てればわかる。いつも青い色を身につけているのだから
僕がこんなんじゃなければ、海も空も山ももっと色々な所に行って一緒に見れただろうに……
「私が1番好きなのは、ここで見る青い空。」
窓から心地のいいそよ風が、彼女の髪を撫ぜる。
「ねぇ、蒼?私はあなたが好き。いい加減気がついてよね?」
僕は鈍いなー……爽良も僕のこと好きだったなんて
ありがとう、ごめんなさい