しば犬

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10/2/2025, 12:37:47 PM

いつもの帰り道、いつもの電車
そんな何気ない日常
だか、日常の裏には非日常が潜んでいる

ガタンゴトンと電車に揺られいつものように帰路に着く
ガタンゴトンと揺れる電車は心地よいが、他人の事が気になる。
だから、いつも通りヘッドホンを着け好きな音楽を流す。
外界と少しだけ隔絶され、他者との交流を少しだけ切り離す。
角の席に座り、カバンを抱き枕にし少しの休息をとる
これが僕の日常でありひと時の心の安らぎなのだ
家は心地よくない、だからこそ擬似的にでも1人になれる今が尊いのだ
習慣とは体が覚えている
どんなに疲れていようと、いつも通り最寄りの駅で目が覚める
だが、ここはどこだ?
電車の中というのは間違いない
いつもの角の席、いつもの白い内装と広告
それに、僕はまだ電車を降りていないのだ
ありえない事に、僕以外人がいない......
寂れた街ではあるが、通勤通学ラッシュというものはある
そして僕の家の最寄りは、それなりに利用人数があるはず
なのに、人が誰も載っていない
終点に着いたなら、車掌が起こすのだから。
寝過ごしていないし、車掌にバレることなく車庫に来た訳でもない......なんだこれは......

コツン、コツンと遠い足音が聞こえる
人の足音だ、僕以外にこの電車に誰か居たんだ
音の方へ顔を向けると、黒い人影がみえた。
遠目に見て大きい。実際に合えば190cmはある様に感じるそれを見た。
影はだんだんと近くなってくる
予想通り大きく、恰幅も良さそうな人
ただ、黒いシルエットしか分からないが
とりあえず、何があったか尋ねてみようと決心し
そのまま席に座り続けたコツン、コツンと近くなる足音
だが急に足音が止まる

「............」

え?!声が出ない??なんでだ?
驚きと共に思考をめぐらす。ふと、違和感に気がつく......いつの間にか、ヘッドホンから流れる音楽は止まっていた
違う!音がそもそも無くなってる......なんで?

影が気がついたら後ろから伸びている
振り返るとそこには、真っ黒い人のような影
顔があるはずのそこには、切り裂かれたかのように大きな口がニタニタと笑っている
そして、あるはずの目や鼻、眉髪さえもない
一瞬でやばさのわかるそれがいた
口をニチャアと開ける。大きな赤い舌と虚空のような世界が口の中にあった
咄嗟に僕は走り出した

なんだよあれ!なんなんだよぉおおおお!
音がないのも、こんなところにいるのも全部いつが
なにかしたのか?
やばい、やばい、やばい、やばい!!!!
逃げなきゃ、今は逃げなきゃ

一目散に、電車内を走り抜ける
連結部分の扉を開けて次の車両、また次の車両
3台ほど走り抜けたとき
心臓の音がドクン、ドクン、ドクン、ドクンと煩く警鐘を鳴らす

「はぁ......はぁ、あ?声が音がでる............」
逃げれたんだ

10/2/2025, 9:56:08 AM

「はぁ...はぁ...はぁー」
いつもの道を走る
代わり映えのしないいつもの道
だからこそ季節の移ろいがわかる
茹だるような熱風も、じっとりと纏わりつく湿気も
騒がしい虫の鳴き声も、摩天楼のような白く高い雲も
今はもうどこにもない

涼やかな風が火照る身体にエールを送る
ドクン、ドクンと早めの鼓動のビートに合わせ
規則的に奏でる地面を蹴る音と鈴虫が歌を重ね
帰路に着く車の音がこの曲に厚みを出す
たまに聞こえるバイクのアドリブさえ、この曲の味と言えよう
朱色に染っていた空は、気がつけば
月明かりが灯る藍色の空へと移ろう

自分の走るタイムが遅くなったのだと錯覚するほどに
早く夜が訪れる
「……はぁ。まだ17:30だって言うのにもうこんなに空が暗い......ペースも問題ない。大丈夫」
夏も終わったというのに、まだ僕はこの習慣を捨てられない
気晴らし、暇つぶし、言い訳をしながら
この未練を捨てきれない
走ることしか僕にはできない
走ることの疾走感と楽しみを知っている
走ることの出来ない絶望を知っている
走ることで知った壁の存在を理解してる
走ることで知った頂きをまた見たい

早めの雪が降った12月のある日
酒鬼に惑わされた黒いサンタクロースが
義足を与えて
消えることの無い穴
全盛期に追いつくことのないスピード
戻らない体力身につかない技術

秋の訪れは、僕の焦燥感を加速させると共に
あと1年の猶予がある事を現実を教えてくれる
全日本の大会......最後の大舞台
ここで勝てなきゃ次は無いと妄執にも似たそれを原動力に変え静かに闘志の炎を輝かす

9/27/2025, 6:34:12 AM

閑静な住宅街の隅、そこに佇む小さな喫茶
レトロな雰囲気とジャズが流れる店内
カランと店の扉が鳴る
ジャズのテンポに重なるブーツの音
やっと来たようだ。
腰まである黒い髪
赤いジャケットに黒のショートパンツ
モデルのような体型と強めのメイクは街を歩く人の目を引くことだろう...

「...すみませーん、いつものコーヒーお願いします」
彼女は店に入るやいなや注文をマスターにすると
僕の目の前に悪びれる様子もなく座りニタニタとした顔でこちらを見ている
「...はぁ、先輩呼び出しておいて遅刻ですか?」
「いやぁーすまない。だが君はこうして待っていてくれた。」
気持ちの籠っていない言葉を羅列してく先輩。
「まあまあ、今回も君の力が必要でねー手を貸してくれないかい?」
「そんなことだろうと思いましたよ。でもこの前みたいなのはごめんですよ...あーいうのは僕には向きません」
「あははははは!!!あれは、傑作だったな。でも私はとても似合っていると思っていたけどね」
運ばれてきたコーヒーをすすり先輩は話を続ける

「君は、知ってるかい?
『本当に美味しいコーヒーは甘い』と」
突拍子もないことを言うのはいつもの事だが
「コーヒーは、苦いものですよ。でも先輩、本当なんですか?」
「あぁ、本当だともコーヒー好きのイタリア人が言うんだ!間違いない」
「なるほど...僕が知らないだけで本当なんですね」
「私は、君のそういう純粋で人の話を受け止めるところは好きだよ。だが、この話に納得するには早いぞ
『コーヒー』と言ったが『ブラックコーヒー』とは言っていないし
イタリア人はエスプレッソを好む。山盛りの砂糖を添えてね。事実と真実は異なるってことさ」
なるほど、ニタニタしていたのはこういうことかと合点が行く。
「さて、本題に移ろう...今回の事件は面白いぞ」
これまでの話は前振りかよ...と呆れつつ
先輩の顔がまじな所をみて僕は脳を切り替える
「先輩、話すのはいいですけど...マスターが入れてくれた美味しいコーヒーを無駄にするんですか?」
「おや、コーヒーが冷めてしまったね...マスターおかわりお願いします。
じゃあ、次はコーヒーが冷めないうちに話すとしよう」

そう言ってデータファイルを僕のスマホに送り話を切り出した

「この案件、僕には荷が勝ちすぎてませ?」
「そんなことない、君じゃなきゃだめなんだよ...元米軍最年少エーススナイパー。ウィリアム・テルじゃなきゃね」

9/19/2025, 1:26:55 AM

「ねぇねぇ、もしもこの世界が終わるなら?
君はどうする??」

先輩との会話は、唐突に始まる。
今日の議題は、『もしも世界が終わるなら』だそう。
そして、いつも通り断りもなく煙草に火をつける先輩
はぁー...とため息をひとつ零し、窓を開け灰皿を準備する。
「そーですね、多分いつも通りに過ごすと思いますよ」
普段と変わらずスマホを見て
普段と変わらず飯を食べ
普段と変わらず勉強に勤しむだろう
僕みたいな平凡な人間はきっとそうする
「うーん、君はやっぱり面白い!どんな世界になろうと君は平凡で居続けるだろうさ」
貶してるのか、褒めてるのか分からないことを先輩は言う。
「面白ついでに言おう、この『もしも』は現実になるし、それは明日だ。」
さらに続けて突拍子もないことを自信満々に言うのだ
やれやれと言う気持ちと、この人の話にはちゃんと理由があることを知っている。だから僕は聞き捨てならない内容を今回はいうなと思ってしまう。
「さぁ、もう一度聞こう。『もしも世界が終わるなら』そして、それが明日だとするなら君はどうする?」
にたにたと笑い煙草を吹かす先輩
聞かれた答えについては、依然として変わらない
「そうですね、やっぱりいつも通り過ごします。
これから先輩とご飯を食べて、酒を飲みます。
先輩が帰ったら課題をこなし眠ります。
ただ、本当に世界が終わってしまうなら
.....いつもよりほんの少しだけ長く眠りたいですかねー」

キョトンとした顔をした先輩。
ぽとっと灰が膝の上に落ちた。
「......ふふ、あはは!面白いな、やっぱり
なにかをする訳でもなく、ほんの少しだけ長く眠りたいか!あははは」
「そんなに笑わなくてもいいじゃなぃですか!
そんなに言うなら、先輩は何をするですか!」
ゲラゲラと笑う先輩にちょっとだけムカついた。
それと同時に先輩の答えも気になった。
「あはは、はぁぁあ。そうだね。後輩、君と共に過ごしたいと思うなー
他愛もないくだらない話で終わる世界を共に待ちたいかな......」
先輩の笑っていた顔が静かに物憂げな顔へと変わる。
分かってしまった。この『もしも』は必ず来る。近いうちに......
「先輩、じゃあ今日だけ、今夜だけちょっと贅沢しません?これから酒盛りして美味しいご飯食べて
明日からは、いつもみたいに過ごしませんか?」
「いいねぇー、じゃあとっておきを持ってこよう。
君は日本酒もいける口だったよね?」

「いけますよ!なんなら大好物です。なんで、準備進めますね。それと風呂入ってきてくださいよー少し臭いますから」
「あははは、わかったよ。シャワー浴びてくるから美味しいご飯よろしくねー」

終わると思うからこの日が輝くし
終わらないと思うから、また来ると思ってしまう
終わってしまうなら、永遠とこの時間が続いて欲しい
終わないとしたら、先輩と同じ時を同じ場所を過ごしたい。
それが僕の日常なのだから。

9/15/2025, 1:34:26 PM










やぁ、よく僕を見つけてくれたね
良かったら作品を覗いて見ないかい?












これはセリフじゃありません。
この文章に目が止まったあなたに
画面の目の前のあなたに伝えています。


なんというか、メタ視点と言うやつでお話します。
今回のテーマ
「センチメンタル・ジャーニー」
どう解釈するかは、人それぞれですが
僕は、直訳した感傷旅行をそのまま受け取りました
ただ、これは作中の自分物が感傷に浸り旅行をするというものではなく
読み手である我々が、作品内の彼らの感傷に浸る
旅行(ダイブ)するのだと捉えました。

あまり明るい作品を書かないので、その旅の寄り道程度にはピッタリだと思います。きっと、多分、Maybe?

良かったら楽しんでください!

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