(下書きとして一時保存)
20241204.NO.111「夢と現実」
(下書きとして一時保存)
20241202.NO.110「光と闇の狭間で」
それをできる人間は果たしてどれほどいるだろうか。
「対魔法使い戦はっ! 距離を取ったら、死!!」
そう叫ぶ瞳は真っ青だ。俺の編んだ魔法陣より濃くて深くて──飢えた獣みたいに、ギラギラと底から光を放つ真っ青な目。
ほんの一瞬ブレた思考の隙にヤツが消える。いや違う。身を屈めて俺の視界から外れ、最短で距離を詰められる。
最短、つまり真正面。
魔法陣が破られる。身構えたときにはもう遅い。壊れた魔法陣が霧散する。その細かい光の粒が、やけにひとつひとつクッキリ見える。その奥から迫る、異様な輝きを放つ双眸も。
「ぐあっ!」
衝撃と共に視界が回る。それから全身に走る痛み。主に腹部。最後に、胸の上にかかるひとり分の体重。
「──だから、魔法使い相手に距離を取るのは悪手だよ。後ろに下がろうとするのはきみの悪い癖だ。相手が強力な魔法使いであればあるほど、接近戦に持ち込むべきだ。って、いうのを、いつも言ってるはずだけど?」
そうこちらを覗き込むアルコルは、いつものように腹の底の見えない笑みを浮かべていた。
「……チッ。どけよ。わかってンだよ、ンなこと」
「あはぁ、わかってるなら早く実践しなよ。そうしないと魔法の使えない俺にだって、いつまで経っても勝てないよ」
「るっせェ」
わかってる。そりゃ強力な魔法使い──魔人相手に遠距離戦をしようとしたって、魔法で撃たれるだけだ。相手は魔法のエキスパート。だったら近距離から魔法を編む隙もないくらいの攻撃をするしかない。
わかっちゃいるが──。
どうしても、相手が魔法を使おうとすると反射的に離れちまう。分が悪くなると距離を取っちまう。ンなの、生存本能みたいなモンだろ。
その本能を乗り越えて、ここぞという時に踏み込むには。強大な相手を真正面から殴るには。
あとどれくらい修行をすればいい。
あとどれくらい経験を積めばいい。
真っ青な瞳が遠くなる。
アイツとの距離は、あとどれくらいだ。
出演:「ライラプス王国記」より イル、アルコル
20241201.NO.109.「距離」
「ケホッケホ」
「おやおや魔王サマ、こちらをどうぞ。はちみつ入りの生姜湯です。喉は魔法使いの命ですよ」
「……うん。置いといて」
「……おや。俺の言葉を素直に受け取るなんて珍しい。これは本格的に体調が悪いみたいですね。本格的な冬にはまだ早いですが、近頃は朝晩とめっきり冷え込むようになってきましたからね。夕食は消化にいいものにしましょう。魔王サマはそれを飲んだら休んでください。ああそうだ、先に火炎魔法を使えるものに部屋を温めさせておきましょう。それから……」
ペラペラと話を進める翼竜族の男の袖を、ロキはクイと引っ張った。呆れ顔をしながら。
「……ルイン。大げさすぎだよ。ちょっと喉痛いだけだから」
「しかし……」
「平気だって。でもこれ飲んだら一旦寝る」
ルイテンの置いたコップを一口啜って窓を見る。外の景色は、白く暗い。
「ここで体調を崩したくはないからね。今年の冬は長そうだ」
出演:「ライラプス王国記」より ロキ、ルイテン
20241129.NO.108「冬のはじまり」
(下書きとして一時保存)
20241126.NO.107「微熱」