「ケホッケホ」
「おやおや魔王サマ、こちらをどうぞ。はちみつ入りの生姜湯です。喉は魔法使いの命ですよ」
「……うん。置いといて」
「……おや。俺の言葉を素直に受け取るなんて珍しい。これは本格的に体調が悪いみたいですね。本格的な冬にはまだ早いですが、近頃は朝晩とめっきり冷え込むようになってきましたからね。夕食は消化にいいものにしましょう。魔王サマはそれを飲んだら休んでください。ああそうだ、先に火炎魔法を使えるものに部屋を温めさせておきましょう。それから……」
ペラペラと話を進める翼竜族の男の袖を、ロキはクイと引っ張った。呆れ顔をしながら。
「……ルイン。大げさすぎだよ。ちょっと喉痛いだけだから」
「しかし……」
「平気だって。でもこれ飲んだら一旦寝る」
ルイテンの置いたコップを一口啜って窓を見る。外の景色は、白く暗い。
「ここで体調を崩したくはないからね。今年の冬は長そうだ」
出演:「ライラプス王国記」より ロキ、ルイテン
20241129.NO.108「冬のはじまり」
11/30/2024, 9:40:24 AM