「……静かだな」
「そうだね。──気をつけよう。罠があるかもしれない」
剣を背負った青年が呟き、小枝を握りしめた少年がそれに答える。
彼らが立つのは荘厳な神殿。
そしてその視線の先。長い長い廊下と高い高い階段の先にあるのは──この距離からでも眩む、大きな丸い宝石だった。
「行こう。あれで──あれで最後だ。あれを壊せば、この馬鹿な戦争は終結する。くだらない茶番は幕を下ろす」
「……あァ。そォだな」
先に歩き始めた少年の背を一歩遅れて追う。自分の胸ほどの高さもない後頭部を見ながら、イルは先ほどの言葉を反芻する。
馬鹿な戦争は終結する。
くだらない茶番は幕を下ろす。
……そして。
俺たちの旅も、ここで終わる。
出演:「ライラプス王国記」より イル、ロキ
20240929.NO.66「静寂に包まれた部屋」
別れ際に言葉を遺してくれるのは、きっと別れる覚悟を決めたから。
あなたはきっと、最期まで闘ってた。必ずまた戻ってくると、最期のときまでそう思ってくれていたのでしょう。
別れの言葉がなくとも、あなたはたくさんの歌を遺してくれた。ときに寄り添い、ときに手を引き励ましてくれる、そんなたくさんの歌を遺してくれた。
あなたの歌をお守りに。
あなたの分まで、なんて烏滸がましいけれど、私なりにあなたの愛した世界を生き抜いていこうと思います。
どうか安らかに。
20240928.NO.65「別れ際に」
酸欠少女 さユり様
ご冥福をお祈りします
突然の雨だった。
まったく雲がなかったわけじゃない。ひとつも予兆がなかったわけじゃない。
けど、まさかこんなことになるなんて思ってもなくて。まさに青天の霹靂だった。
「こんなのただの通り雨だよ」
優しいあなたは言う。
けれどいつ晴れるのかはわからない。見上げる空は分厚い灰色の雲ばかりで。
ミカヅキはまだ見えない。
20240927.NO64.「通り雨」
R.I.P
「つ、疲れた……。もう歩けねぇ……。助けてサトル」
「体力なさすぎ。きのこ狩り行こうって言い出したのジンゴさんじゃないですか、まだ山登りしかしてませんよ。もうちょっと頑張ってくださいよ」
「言い出したの俺じゃねーし。キキだし」
「私は彼氏とふたりできのこ狩りに行ったら素敵だろうな〜って言ったの。ふたりで」
「うっす」
「ま、まあまあキキ先輩、みんなできのこ狩りするのも楽しいじゃないですか。私、先輩とお出かけできて嬉しいです!」
「うふふ、ごめんなさいね、気を遣わせちゃって。私もエミちゃんとお出かけできて楽しいわ」
「俺もみんなで遊べて楽しいです! 麓でバーベキューセット貸し出してるし、後で焼いて食べましょ!」
「カイくんは変わらず元気ですね。僕とジンゴさんは料理に関して戦力外ですが、それでもよければ……」
「調理実習室出禁のお前と一緒にすんなし。俺は肉焼くくらいできっし」
「本当ですか……? まあきのこを採らないことには始まらないですし、そろそろ本格的にきのこ狩り開始しましょうか」
「せやな。5人で固まってても効率悪いし、適当にバラけっか」
「そうね。未来、あっち探しましょ」
「うっす」
「エミさん、あっちの方行ってみませんか?」
「はい……!」
反対方向に散って行った2組の背をキョロキョロと交互に見て、ポツンと残されたカイは叫ぶ。
「あれ、俺は!? みんなできのこ狩りは!?!?」
出演:「サトルクエスチョン」より 仁吾未来(ジンゴミライ)、問間覚(トイマサトル)、白沢希喜(シロサワキキ)、二梢絵未(フショウエミ)、神宮開(ジングウカイ)
20240926.NO.63「秋🍁」
カイは戻ってきたサトルたちときのこ狩りしました。たぶん
(下書きとして一時保存)
20240925.NO.62「窓から見える景色」