「……静かだな」
「そうだね。──気をつけよう。罠があるかもしれない」
剣を背負った青年が呟き、小枝を握りしめた少年がそれに答える。
彼らが立つのは荘厳な神殿。
そしてその視線の先。長い長い廊下と高い高い階段の先にあるのは──この距離からでも眩む、大きな丸い宝石だった。
「行こう。あれで──あれで最後だ。あれを壊せば、この馬鹿な戦争は終結する。くだらない茶番は幕を下ろす」
「……あァ。そォだな」
先に歩き始めた少年の背を一歩遅れて追う。自分の胸ほどの高さもない後頭部を見ながら、イルは先ほどの言葉を反芻する。
馬鹿な戦争は終結する。
くだらない茶番は幕を下ろす。
……そして。
俺たちの旅も、ここで終わる。
出演:「ライラプス王国記」より イル、ロキ
20240929.NO.66「静寂に包まれた部屋」
9/29/2024, 3:33:40 PM