─物憂げな空─
チャイムが鳴り、
クラスメイトが教室から出ていく。
僕も例外ではなく、廊下へ出る。
いつも一緒に帰る友達は、今日は休み。
一人で歩いて玄関に向かう。
靴を履き替え、また歩く。
駐輪場で自分の自転車を探し、鍵を回す。
いつもの見慣れた道を、ただ走る。
鼻歌なんか歌ったりして。
いつもと変わらない日々、
いつもと変わらない光景、
いつもと変わらない行動。
唯一変わっていたものは、
玄関前で見た、物憂げな空だけだった。
─誰もがみんな─
世界には、様々な生き物が居る。
当たり前のように息を吸って、吐く。
仕事をしたり、学校へ行ったり、
逆に何もしなかったり。
でも、それだけで生きていられる。
幸せでいられる。
誰もがみんな、“当たり前”を信じて、今日を生きる。
だがそれが、僕には辛かった。
勿論、息を吸って吐くことなら、最初からできていた。
しかし、大人になるに連れ周りの“当たり前”が分からなくなった。
そんな僕は、「邪魔」「消えて」「うざい」と言われていった。
なんで、そんなことを言うんだ。僕は悪くないだろう。
世界が悪いんだろう。世界が可笑しいんだろう。
“勝手に”当たり前を作って、“勝手に”それを押し付けて、
“勝手に”それが出来ないと見捨てて、“勝手に”罵倒の言葉を浴びせる。
そんな世界、可笑しいだろう?苦しいだろう?
生きたくないと、思っても仕方ないだろう?
本当、生きていたくない。
それが叶わないのなら、息をしているだけで、褒めておくれ。
生きてるだけで、うんと沢山、褒めてくれ。
─1000年先も─
綺麗な夕日を見た。
それは鮮やかなオレンジで、
吐息が出る程キラキラと輝いていた。
この世界には、僕のまだ見ぬ景色が広がっている。
全部を見たいなんて願望は言わない。
ただ、その沢山の美しい景色が100年、
否1000年先も続いて行くことを願う。
誰かがそれを見て泣いて、
誰かがそれを見て喜んで、
誰かがそれを見て笑って。
そんな小さなことで、誰かが幸せになれるのなら。
僕はそれ以外、何も望まないよ。
─優しさ─
「僕にはその優しさが辛いんだよ!!」
お前が珍しく大声をあげた。
今までそんなことなかったのにという驚きと、言われた悲しみが襲ってきた。
きっかけは多分俺とお前の違いだろう。
いつもいじめのようなことをされていたお前と、いつも笑う俺。
お前へのいじめを俺は止めていた。お前を助けるために。
でも意味がなかった。あまりのショックに、思ったことが声に出てしまった。
「…ふざけんなよ。今まで助けてやったのは誰だよ!」
「君が勝手にしたんだろう?!そのせいで、僕は…!!」
そう言ってお前は、俺のせいでいじめがひどくなったと話した。
「なんでお前みたいな陰キャが、陽キャの君と絡んでるんだって」
お前は泣きながら、痛くて辛くて苦しかったと話した。
「…俺の優しさ、無駄だったんだな。ごめんな。」
君はそう言って、去っていった。
「…ごめん、ごめんよぉ。」
俺のエゴなのに。君に見下されてるように感じて。
もういっそのこと楽になろうって、関係を終わらせて。
君の優しさに縋ってたのは、僕なのに。
「どうしたら、良かったの…?」
君の去った教室には、僕の声だけが木霊した。
─こんな夢を見た─
最近、友達が変な夢を見るようになったらしい。
内容は女の子が電柱から覗いて、ずっと見てくるらしい。
その女の子は、昔近所に住んでいた年下の子で、
よく遊んでいて妹のような存在だったと友達は話す。
どうやら火事で亡くなってしまったらしい。
もうかれこれ1ヶ月近く続いているのだ、と友達は言った。
そんなある日、いつもと違う夢を見たらしい。
いつもは電柱から覗いている女の子が目の前に来て、
何故か持っていた包丁で刺されてしまったらしい。
そして自分の目の前であることを言った。
何を言ったのか気になったが、忘れてしまったらしい。
数日後、夢を話した友達に殺されかけた。
凶器は夢でみた女の子の持っていた包丁とそっくりで。
近くに通り掛かった人に通報され、友達は捕まった。
夢の中で女の子がした行動全てが、捕まった友達の動きにそっくりだった。
夢の中で女の子が言った言葉の後に、僕は刺された。
「おにーさんね、おともだちにころされるよ。こんなふうにね。」
警察に捕まって、パトカーに乗るとき、友達は言った。
『夢の女が居なければ、お前を殺せたのにな。』