君は今
悲しみに暮れて眠りにつく。
愛が見えなくて泣いている。
愛が足りなくて泣いている。
愛が分からなくて苦しい。
僕が君に与えたのは、愛ではない何かで。
きっと君に手渡すには、重すぎるもので。
ごめんね。
その一言さえ言えなくて。
僕らしさなんて、これっぽちもない「それ」は。
君の柔らかな心をただ、傷付けた。
ごめんね。
「それ」になれなくてごめんね。
でたらめな「それ」でごめんね。
「僕」でもなく「それ」でもないものに、出会ってしまった君は、さぞ怖かっただろう。
ごめんね。
この夜を暗くしてしまってごめんね。
この真っ暗な夜が明けたら「それ」でもなく「僕」でもないものになるよ。
「君のための何か」になるよ。
ごめんね。
明日はきっと晴れるから。
たくさん一緒に笑おうね。
物憂げな空
僕みたいだな。
この空をどこかへ吹き飛ばしてよ。
その尖っていて、優しい歌声で。
奇跡は死んだと言ってくれた君は、僕の心を写したみたいに画面の中で歌っていたんだ。
僕の心を救ってくれた曲を、作っていたのは君だった。
そうだね。そうだね。
そうだよね。そうだよね。
早く雨が降って、虹が出るといいのにな。
奇跡が死んだこの世界で、僕はまだ生きていかなきゃいけないから。
虹色くらい、見せてくれてもいいよね?
太陽のような
太陽のようになりたいと、君みたいになりたいと、あの人みたいになりたいと、僕は願ったんだ。
そこまで辿り着きたいと走ったんだ。
でも息が続かなくて、足は痛くて動かなくった。
走っている途中、邪魔だと言って、あの人を傷付けた。僕が蹴飛ばした小石は、あの子にぶつかった。
こんなはずじゃない。こんなはずじゃない。
僕は君みたいに、あの人みたいに、なりたかった。
太陽みたいになりたかった。
太陽は言う「あなたは月みたいに綺麗な人」。
そんなんじゃない。そんなんじゃない。
僕は太陽になりたかった。
月じゃなくて太陽に。
あの人は言う「そのままで大丈夫よ」。
違う。違う。
僕は誰かを照らす光に、なりたかった。
そう、あなたみたいな。
僕は太陽でも月でも、君でもあの人でもない。
僕は悲しいくらい、僕でしかない。
なんでだろう。なんでだろう。
なんで、僕は僕なんだろう。
今日も、僕は僕のまま。
眩しすぎる太陽に目を細めて、答えのないまいにちを生きている。
今日にさよなら
今日にさよならなんて言いたくなかった。
まだまだ昨日のままで居たかった。
もう日付は変わってしまった。
ピリッとした味のレモネードだけ、昨日のまま。
僕は昨日と今日の間で迷子になってしまったみたいだ。
真っ暗な道を走っている間「今日のようなまいにちがずっと続けばいいのに」と願った。
ありのままだった昨日。
そして、今日からは新しい自分の始まりだ。
少しだけ変わった僕に、空っぽのレモネードの入れ物が「おはよう」と言ってくれるだろう。
おはよう。昨日はありがとう。
君のおかけで、またがんばれるよ。
誰よりも
君を愛している。
君を守るためなら、誰かの悪者になっても構わない。
でも、君は僕から離れていくだろう。
君と僕は、ひとりとひとり、別々の人間だから。
でも、でもね。
覚えておいて。
ここに、帰ってきていい場所がある。
大きな声で、泣いていい場所がある。
だから、外の世界で傷付いて、声も出ないような悔しくてどうしようもない気持ちになったらさ?
ここに帰ってきて?
誰よりも、君を想う。
僕の待つこの場所へ。