イブが本番みたいなところがあるので、当日はだいたい疲れて早く寝ちゃう
「クリスマスの過ごし方」
イブの夜
ケーキ片手に帰宅して
冷蔵庫開けケーキ対面
12月24日、ようするにクリスマス・イブの夕方になってようやくノコノコと買い物に出かけた。外はもう真っ暗なのに、ディナーの準備を「今から」するのだ。この時間にスーパーへ行ったって、大騒ぎの夜なんだからもうなにも売ってないだろうと思いつつ出た。家にもなにもないから出ない訳にも行かないのである。
展望としては、まあなんかちょっといつもより豪勢なご飯と、あと出来ればケーキなんかがあればいい、飲み物があればもっといい、という感じだった。でも出来合いのものも、ましてやケーキなんて売ってるわけが無いので、何とか適当に買って、可能であれば(つまり、売り切れていなければ)こういう日に売っているケーキの土台に生クリームといちごを乗せればいいやと考えていた。
ところが、スーパーについてみればあちらこちらないものはあったけれど、予想外に色々とまだ残っていて、ピザも、ケーキの土台も、生クリームもいちごも買えてしまった。うれしくなって色々カートに詰め込んだら1万円を超えた。浮かれすぎである。
いそいそと車に積み込んで、クリスマス・ソングを流しながら帰ってみれば、もう玄関に靴があった。でもリビングに気配はない。とりあえずしまうものを、と冷蔵庫を開けてみれば、大きなケーキが入っていた。悩んで結局買わないような、ちょっといい所のやつ。そしてその隣に、もうひとつケーキの袋があった。別のところのだ。
私たち家族は、とてもベタなことに全員それぞれケーキを買ってきてしまったらしい。みんな、クリスマス・イブ前日まで「クリスマス?いつだっけそれ」みたいな顔していたのに。そして、報連相がなっていない。
けれど、まあ、浮かれた気持ちが私だけじゃないことも、それぞれがそれぞれを思ってケーキを用意したのも、なんだかとてもふわふわした心地がしてうれしかった。うれしかったので、二人で即興の変な踊りを踊った。残りの一人は、クールに去った。
「イブの夜」
クリスマス
気がついたらあと二日
慌ててAmazonお急ぎ便に
気がついたらもうクリスマスまで数日もなかった。なんにも用意してなかったから不味いと思って、急いで「クリスマスプレゼント おすすめ」とか検索するけどイマイチピンと来ない。
あちこち検索してしばらく何を贈ろうか悩んで、結局本人に聞いてしまうことにした。「暖かい手袋が欲しい」との事だったので、今年は自転車用のとても暖かいらしい手袋にした。スマホも使えてスキーにも対応とのこと。喜んでもらえるだろうか。言われた通りのサイズを注文したけれど、やはりネット通販であるからそもそもサイズが合うのかどうか心配だ。
慌ただしくてだいぶまぬけだと思うけど、こういうのも楽しいと思うのはクリスマスのマジックなんだろうか。とりあえず今日は玄関を注意深く見て(置き配なので)、夕食も行き当たりばったりで何とかしようと思う。たまにはこういうのもいいよね、とか言いながら毎年のことである。
「プレゼント」
波打ち際で、
こんな寒いのに裸足で歩いている。
靴をぶらぶら振り歩いて、
吐く息は熱いのに鼻が冷たい。
砂を踏む度に冷たい海水が染み出して、
余命3ヶ月の弱々しい波が
足の下に隠された小島をさらった。
あの湖畔よりも波が小さいの。
可哀想。
日が沈む少し前。
いつもより高い空がおかしな色をしていた。
こんなに透き通った日なのに、風が小さい。
なんだか綺麗な人が向こうから歩いて来ている。
それに急ぎ足の月がゆら、とつぶれて
月のみどりって、
ゆずの香りがするんだなぁって
思ったところで犬に吠えられた。
いっちょまえにあんた、
守ってるんだ。
多分世の中には徳の高い犬と
おばかさんないぬがいるんだろ。
今日はチーズケーキを食べる。
明日はたぶん、チョコレートケーキ。
「ゆずの香り」
ゴォン、ゴォン、ゴォオン
別れの時が来たのだと、
無情な鐘が時を告げた。
抱き合って、口付けて
涙を拭い合い
さようなら、の一言がかすれて消える。
そうして振り返って駆け出して。
がんがんがん
目覚めの時が来たのだと
無情な頭痛が朝を告げた。
頭を抑えて、唸りながら
恋がしてぇなぁ、
起きたくねぇなぁ
でも起きなきゃと
ベッド脇のメガネを探して
さまよった手がメガネを落とした。
やはり、現実はクソッタレである。
「時を告げる」