もし、望むならあなたの未来を見せてあげますよ、なんていう誘いがあったらお断り一択だと思う。
もし、これは未来が見える鏡です!と鏡をお出しされたらそっぽ向くなり目を覆うなりして絶対見ないと思う。
もし、何か一つ超能力を授かれるとしたら、とりあえず未来視は真っ先に除外すると思う。
要するに未来を見るなんてよっぽどの事情がない限り絶対にごめんだということだ。
だけどもし、必ず何か一つは未来を見なきゃいけないんだとしたら。私はとっくに自分なんか死んでいるだろうずっとずっとずっと先の未来を見たいと思う。
私は私に訪れるかもしれない困難や悲劇を見て怯えながら生きるのが嫌なだけで、正直なところ遥か先の未来には興味があるからだ。
SF映画のような世界になっているのかな。それとも、荒廃しきった死の星になっているかもしれない。1回滅亡してやり直しになってたりして。
そういうことを考えたり、魔法みたいな科学が生まれてるかもしれないなんて未来の景色に思いを馳せたりするのは、わくわくして好きだ。
ま、つまるところ私は、臆病で夢見がちなありふれた人間だということだ。たぶんね。
蛇足及び追記:
これらの望みは多くの人に同意を得られると私は信じているし、未来視なんて万が一にも起きないに五百円賭けるけど、念の為にここに表明しておく。人じゃないお方もいるかもだし……?
『私の人生に関しては、ネタバレ厳禁初見プレイで生きていきたいのでよろしくね!!』
と。
「もしも未来を見れるなら」
とぷん、と
沈んで 沈んで
澱の上にゆらりと寝そべる
暗い水底
意識の境界線
見上げる先に、無色の世界
「無色の世界」
家の近所に、桜で有名な川辺があった。
と言っても、せいぜいその近辺に住んでいる地元民の間で有名な程度で、まあ全国規模で有名な名所、例えば上野とかと比べたら市とか区の名前と桜で調べてやっと出てくる程度だったけれども。地元民で勝手に桜山とか桜通りとか呼んでる感じの川だった。
しかしまあ、地元で有名になるだけはあって川沿いに植わっている木はみんな桜。川の方が上が広いから、川にせり出すように木々が伸びてトンネルのようになっていた。ひらひらと散る花びらは花筏となって、精霊とかの通る道みたいにも見える。
そんなもんだから毎年ちょっとした出店とかが出ていて、ぼんぼりが渡されて、浮かれた空気にそわそわする皆の春の楽しみの一つになっていたのだ。
だから毎年、この時期必ず一度は連れ合いと子どもを連れてぶらぶらと春を楽しむのが家族の決まりになっていた。子に強請られてりんご飴なんか買ってやったり、全員でああだこうだ言いながら写真を撮ったりと、言いやしなかったけれどそれは間違いなく私の幸せの象徴のひとつだったのだ。
桜というのは、多分在り方からして日本人が魅了され、おかしくなるような美しさがあるのだと思う。もうドンピシャなのだ。一気にぶわりと花開き、そしてあっという間に散ってゆく。その一瞬の美しさと、一抹のさびしさ。どこか切なくなるような儚い美。
割と殺伐としていて潔く死ね!みたいな、切腹の方法に流行りや様々な作法なんかあるわりに村八分とかじめっとした精神性が見える我らが母国。こういう風に生きて死ねたらいいのに、なんてうっかり思ってそうだとか思う。侘び寂びとか、わかるけれど、わかるけれど、真に健全な精神かと言われると悩むよなぁなんて。
でもきっとみんな苦しかったのだ。衰えや孤独、終わりに美しさでも感じられないと本格的に生きるのも死ぬのも辛すぎる。そう思う。
桜が散った。
今私は一人で、この祭りに来てはそんなことを考えてりんご飴を齧っている。幸せも儚いなァ、と。そう思うようになるまでどれだけの桜の花が咲いて散ったのだろう。画質の荒く色の彩度も低い写真を持って、今年も来たよ、と呟く。
儚い、儚いねェ。
嗚呼、浮世のなんと無常なることよ。
そうして、花筏となっていってしまったひとを想いながら、私が散るのはいつなのだろうか、とか思うのだ。どうせなら美しく散って会いに行きたいなァと、まあ凡そ叶わぬ願いを抱きながら。
「桜散る」
とッてもいい天気だったから、
死ぬにはいい日だと思ったンです。
空が遠くて、
其れが最後です。
「夢見る心」
元々その為に
あなたという存在が
生まれたとはいえ
私としては、
だからといって絶対それに
従わなくてはならないものとは
思っていなかった
あなたが望むなら
期待も責任も義務も
全て無視して、
己のものでは無いと振り払って
外の世界へ飛び出して行ったって
いいと思っていた
だけれども
あなたは本当に皆が望む
理想の存在として生まれて来てしまった
皆、あなたに期待して、
そうすることを疑わなかった
それがどんなに惨いことかも知らないで
そしてあなたは、
優しかったから期待に応えたし
望みを叶えたし、
理想を演じてあげていた
さいごまで、
あなたの全部を皆のために消費して
声高にこんな考えを言えば
攻撃されて、排斥されて
あなたほどの武も知も縁も持たない
私はきっと生きていけないと
そう思った
こっそり言ったって
あなたの周りには虫が多かったから
どちらにせよ
口に出せば、どんなに隠れていたって
誰かの耳には入る、そんな地だ
だから私は保身に走って黙っていた
だけど今、
そんなこと関係ないと、
しがらみや恐れなんか無視して
全て言えば、伝えればよかったと
そう思う
後悔しているのだ
届かなくなる前に、
私はこの想いも、考えも、
本当のことも、この地の秘密も
言えばよかった、と
いつも私はそう
手遅れになってから後悔する
そんなんだからこうして
閉じられた扉にすがりついて
泣き喚く羽目になるのだ
「届かぬ想い」