元々その為に
あなたという存在が
生まれたとはいえ
私としては、
だからといって絶対それに
従わなくてはならないものとは
思っていなかった
あなたが望むなら
期待も責任も義務も
全て無視して、
己のものでは無いと振り払って
外の世界へ飛び出して行ったって
いいと思っていた
だけれども
あなたは本当に皆が望む
理想の存在として生まれて来てしまった
皆、あなたに期待して、
そうすることを疑わなかった
それがどんなに惨いことかも知らないで
そしてあなたは、
優しかったから期待に応えたし
望みを叶えたし、
理想を演じてあげていた
さいごまで、
あなたの全部を皆のために消費して
声高にこんな考えを言えば
攻撃されて、排斥されて
あなたほどの武も知も縁も持たない
私はきっと生きていけないと
そう思った
こっそり言ったって
あなたの周りには虫が多かったから
どちらにせよ
口に出せば、どんなに隠れていたって
誰かの耳には入る、そんな地だ
だから私は保身に走って黙っていた
だけど今、
そんなこと関係ないと、
しがらみや恐れなんか無視して
全て言えば、伝えればよかったと
そう思う
後悔しているのだ
届かなくなる前に、
私はこの想いも、考えも、
本当のことも、この地の秘密も
言えばよかった、と
いつも私はそう
手遅れになってから後悔する
そんなんだからこうして
閉じられた扉にすがりついて
泣き喚く羽目になるのだ
「届かぬ想い」
4/15/2024, 4:22:14 PM