maria

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9/5/2023, 11:51:44 PM

「貝殻」


貝がら

それは魂の抜けた抜け殻

それでもなお

生きた頃の姿を残し

人々の心を動かすほどの力を宿す。

あるものは恋人の手のひらの中

あるものは名もなき芸術家の作品

あるものは心躍らせる女性のイヤリング

あるものは目を輝かせる子どもに握られて

美しき気高き生きた証


いきた証

   わたしはなにをのこすだろう

           
            「貝殻」

9/4/2023, 1:15:57 PM

「きらめき」

木の葉にのこる朝露とか

水面に映る陽の光とか

雲間から差し込む天使の梯子とか

雨上がりの山の木々とか

夜の海を照らす街明かりとか

目で見えるきらめきは

こんなにもあるのに。



目で見なくてもきらめいているもの

それがあるってこと

ふしぎだけれど

どうしてあなたの姿だけ

光っているわけはないのに



    きらめいてみえるのだろう。


          「きらめき」

9/3/2023, 11:57:16 AM

「些細なことでも」


些細なことでも


目にとまる、

気になってしまう。

心配でたまらない、

泣けてくる、

幸せを感じる、

どうしたことか

心が嵐のように乱される


       それが 愛


       「些細なことでも」

9/2/2023, 2:04:22 PM

「心の灯火」

人の心は宝石のようだと
ひとは云う。

ダイヤモンドのように
硬くて価値があり
カットされて磨かれて美しく輝く。

サファイヤのように
ひとを慰め

エメラルドのように
ひとに寄り添い

ルビーのように
人を駆り立てる


私の心は  きっと真珠

ダイヤモンドもサファイアも
エメラルドもルビーでさえ
透明で隠すところがないこころ

わたしのこころは真珠
誰もわたしを削れない
誰も私を暴かない
ほんわりと白い光をその身に纏い
内側からの かすかな光でその身を飾り
真球であるその心は
どこからも覗かれる隙がない。

その私のこころの真珠を
内側からほんのりと照らすのが
決して誰にも触れさせない
心の灯火


たいせつなわたしのほんとう
たいせつなわたしのしんじつ

         「心の灯火」

9/1/2023, 3:26:36 PM

「開けないLINE」


約束事のある前日の

あなたからのLINEは

こわくて開けない。

だから最悪の状況を想像して

これ以上傷つかない準備をととのえてから

部屋で独りになってから開く。

『あした、映画のあと
 何か予定はありますか?』  

こんなふうに文字のひとつひとつを

ゆっくりとなぞるようにみて

貰ったことばをだいじにだいじにしてるなんて

あなたには想像もつかないかもしれないけど。

電話みたいに

文字を頬にあてるなんて

決して見せられない姿だけど。

………………

映画に誘ってみたけれど

彼女は義理で来てくれるんだろうか。

『映画?いいですね!』の短いLINEを

何度ながめたか。


あの笑顔で打ってくれたのだろうか。

できればその後も食事をしながら

感想を語り合いたい。

だけど予定があるのかもしれない。

僕とは映画だけのつもりかもしれない。

なんと書けば

なんといえば

なんと書き始めたら

なんと……ああどうしよう。

『あした、映画のあと
 何か予定はありますか?』 

ようやく送信したLINEなのに

彼女からはなかなか返信が来ない。

映画だけのつもりだったか。

僕とは隣りにいるのは三時間が限度か。

映画館では話さなくてもいいから

OKしたのだろうか。

押し付けがましい文章だったか。

下心があるようにとらえられたか。

返信が届いた。

こわくて開けないLINE


ようやく意を決して開いてみると


『1日中、予定はあけてあります。
まずは食事をしながら
感想を語り合うのは
どうですか?』


ああ 神様!

この世に神様はたしかに存在する!!

まずは  と書かれてある。

このことばがこんなに重いとは。

僕は画面を胸に当ててから

返信を書き始めた。


        「開けないLINE」






  

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