maria

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8/27/2023, 11:43:53 AM

「雨に佇む」


雨の中に佇むなんて
あわれで不幸せなシーン、
だと思ってた。

あなたの部屋で話し込んでいるうちに
外は土砂降りになっていた。
「小雨になるまで、まだいたら?」
あなたの言葉に
まだ何か伝え残したことがあったのだろうかと
訝しんで思い出す。

「ありがとう」と
たどたどしく応えるわたし。
まだたりない。
感謝を伝えきれていない。

なかなか止まない雨に
「帰るなら、これ、使って」と
レインコートを差し出すあなた。

ありがとうと言って受け取ったけれど
指先がでないくらいブカブカで
笑顔になる私たち。

雨の中、家から出て二階を見上げると
手を振る笑顔のあなた。

その笑顔を目に焼き付けたいのに
涙で滲んでしまう。

雨の中に佇むなんて
あわれで不幸せなシーン、
だと思ってた。

冷たい雨にうたれているのに
この温かさはどうだろう。
この嬉しさはどうだろう。

           「雨に佇む」

8/26/2023, 10:57:16 AM

「私の日記帳」


本来は日記帳ならば
カギをかけるほどのものなので
人に見せるものではない。

ならばいま私の綴る
これらの日々の吐露はなんであろう。

いま、この瞬間に
この崩れかけた豆腐のような
軟弱な儚い脳みそで考えたことは
今日、このときに
小さなわたしが生きた証拠になる。

であるならば
この文字のひとつひとつが
私の日記となり
日記帳となってゆくのだろう。


人に見せるべきものでもないはずだが
今日も、あがきながら
精一杯を記す。



が、できることならば



流し読みしていただけないだろうか。




         「私の日記帳」


8/25/2023, 12:16:34 PM

「向かい合わせ」


ざわめくカフェで
あなたの前に向かい合わせに座ったけれど
なんだか緊張してしまって
何を話したらいいか
まったくわからなくなってしまった。

お料理が運ばれてきて
左利きのあなたと
右利きのわたしと
フォークとナイフも鏡のように
向かい合わせになっている。

お互いに気づいて
ちょっと目を合わせて笑った
そのやさしい表情も
その心の中の思いも きっと
わたしとあなたはおなじ

向かい合わせの鏡のよう。

何も話さなくても もういいよね。


            「向かい合わせ」

8/23/2023, 11:37:35 AM

「海へ」


このほしの最初のいのちは
海で生まれた。
彼らは色々なからだのデザインを試し、
脊椎を選んだものが逃げるように川へ向かった。

そこは栄養の少ない水の中、
魚たちは体内に栄養を蓄えるため
複雑な枝分かれした骨をこしらえた。
頑丈な骨を手に入れた脊椎動物は
陸へあがり自分に適した
生きるフィールドを求めて移動し増えた。

この星に雨が降り、山の清水が溢れると
水たちは皆 海を目指した。

山の土も水に促され
共に海を目指す。

いのちも どうやら
海を目指すようにできているようだ。
すべてを受け止めても
顔色ひとつ変えない
偉大な愛情深い
このほしの胎内にかえるように。


8/22/2023, 3:22:12 PM

「裏返し」


つらいと思っていたことが幸せだったり

幸せだと思っていたことが

じつはそこから先のない話だったり

将棋の「歩」が

裏返しになると「金」になるなど、

この世には

ひとめみただけではわからないものがある。

裏返してこそ

本物に巡り合う可能性がある。

      
           「裏返し」

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