「鳥のように」
容赦なく照りつける
残酷な太陽
植物たちはとうに両腕を垂らし
太陽に頭を垂れひれ伏している。
逃げ場のない乾いた土の上で
痩せたヘビが
少しでも腹を冷やせそうな場所を探し
這いずっていた。
ふわりと風を感じたので
急いで柱サボテンに身を寄せる。
舞い降りるかと思うと
方向転換して飛んでいったのは
鷲だろうか。
ヘビはサボテンの陰から
少しだけ頭をもたげると
天空の覇者である大鷲の
行く先をぼんやりと見ていた。
私にも鳥のように翼があったなら
この鉄板のような地面を蹴り上げて
空へと舞い上がるだろうに
叶うものならば鳥に生まれ変わりたい。
その時、辺りに一発の銃声が響き
天空の大鷲はもがき
その美しい羽を散らしながら
地面へと落ちていった。
猟犬たちの吠える声がする。
だんだんと光を失う瞳で
大鷲はぼんやりと先程逃した
獲物のことを考えていた。
あの蛇のように
目立たぬように地面を這うものであったなら
叶うものならば蛇に生まれ変わりたい。
蛇は音を立てぬよう
そっとその場を離れ
見つかるあてのない餌を探しに
どこかへと這っていった。
「鳥のように」
「さよならを言う前に」
夕陽の当たる
オレンジ色の校門の前で
「別にお前に嫌われたって構わない」
真面目な顔の君もオレンジ色に染まる。
「ただ」
「お前が周りの人から愛されて、
幸せになってくれれば」
「だから…… 」
これが君が僕からはなれた理由。
さよならを言う前に
一生忘れられないような言葉をくれるから
僕は今でもオレンジ色を見るたびに
切なくなってしまう。
「さよならを言う前に」
「空模様」
太陽を隠す一面の雲も
空を覆い尽くす真っ黒な雨雲でさえも
私の隣りにいる
あなたの表情を隠すことはできない。
晴れていても
曇っていても
雷雨であったとしても
空模様がどうあったとしても
揺らがないのは
私のこころ模様。
あなたの表情をみるに
あなたのこころ模様も
きっと わたしとおなじ。
黙って見つめ合って ゆっくり微笑む
ふたりの こころ模様
「空模様」
「鏡」
鏡にうつる自分は
自分ではない。
左右が反対
心も反対
表と裏も反対
直視していられなくて
思わず目をそらすと
鏡の私も反対側に目をそらす。
離れながらも遠くからチラリと見ると
やはり同じようにこちらを伺う。
わたしはこの裏側のわたしと
どうやって折り合いをつけて生きて行けるか。
向こうの世界では
私と反対なのだから
裏の私ならば
すでに答えを持っているのかもしれない。
「鏡」
「いつまでも捨てられないもの」
たぶん おそらく きっと
うん 絶対に
告白なんてできない。
興味のないふりをして
こちらを見ていない時だけ
あなたの姿を遠くから瞳に焼きつける。
せめて夢の中なら ゆめなんだから
告白したっていいはずなのに
どうして夢の中まで
わたしときたらリアルのように
見てないふりなんかして
話しかけることもできやしない。
夢の世界だってわかっているのに
どこの世界にいっても
わたし は わたし
わたしという殻を
いつまでも捨てられないもの
どこの世界で巡り合っても
あなたの前に来ると
わたし は わたし
どこの世界で巡り合っても
わたし は あなたに恋をする
「いつまでも捨てられないもの」