「雨に佇む」
雨の中に佇むなんて
あわれで不幸せなシーン、
だと思ってた。
あなたの部屋で話し込んでいるうちに
外は土砂降りになっていた。
「小雨になるまで、まだいたら?」
あなたの言葉に
まだ何か伝え残したことがあったのだろうかと
訝しんで思い出す。
「ありがとう」と
たどたどしく応えるわたし。
まだたりない。
感謝を伝えきれていない。
なかなか止まない雨に
「帰るなら、これ、使って」と
レインコートを差し出すあなた。
ありがとうと言って受け取ったけれど
指先がでないくらいブカブカで
笑顔になる私たち。
雨の中、家から出て二階を見上げると
手を振る笑顔のあなた。
その笑顔を目に焼き付けたいのに
涙で滲んでしまう。
雨の中に佇むなんて
あわれで不幸せなシーン、
だと思ってた。
冷たい雨にうたれているのに
この温かさはどうだろう。
この嬉しさはどうだろう。
「雨に佇む」
8/27/2023, 11:43:53 AM