maria

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5/7/2023, 1:33:31 PM

その日
好きになった人の名が 直人だったから
なおと という音の響きが特別になった。

直人が好きなバンドがバンプだったから
バンプの曲が特別になった。

直人を産み育ててくれたお母さんの名前が由紀子だったから
ゆきこ という響きが特別になった。

直人のお祖母ちゃんが優しいときいたから
街ですれ違うお年寄りが特別になった。

直人が子どもが好きだと言ったから
煩いと思っていた近所の幼稚園も
保育園も 小学校も私の特別になった。

すれ違う知らないおじさんも

イヤホンしてるおにいさんも

忙しそうな自転車のおばさんも

みんな みんな

きっと誰かの特別な存在


初恋の日

私はこのほしをはじめて

   いとしいと思うようになった。


お題「初恋の日」

5/6/2023, 12:10:47 PM

明日 世界は終わらない。

一ヶ月後にだって世界は終わらない

世界が終わることはない。

明日も来月も来年も
世界が終わることはない。

ただし

今かもしれないし、
今夜かもしれない。
夜中なのかもしれないし、
明日かもしれないけれど

あなただけが
いずれ世界から
終わらせられていることは確定

あなたがあなたの世界を終わらせるだけ

願うことはないけれど

おやすみなさい 

覚めない夢を




お題「明日世界がなくなるとしたら
   何を願おう」

5/5/2023, 1:22:16 PM

君の好きなものは恐竜

アンキロサウルス
スティラコサウルス
プロトケラトプス に
マイアサウラ

次から次に出てくる
草食恐竜の名前

ベッドの中で読む絵本のせい
おかげで私の夢に出てくるものは
はるか昔のそのまた昔
ドスンドスンと歩くもの
草を食むもの、眠るもの
草食恐竜の群ればかり

彼らは化石になってるのよね?


君の好きなものはカブトムシ

森で見つけた母が産んだ
19個もの白い卵
大事に大事に育て上げ
秋から冬越し
スクスク育った親無し子らは
スヤスヤ夢見て土中で眠る。

そろそろ蛹の準備に入る頃
蛹になったら数週間
夏にはカブトムシになるという

まだまだ未来のはなしでしょ?

君と出逢ってから、私ときたら

太古の昔から未来まで
時間旅行に駆り出され
振り回されてる
気がするけれど

それが嬉しい  

ありがとう


            我が子へ



お題「君と出逢ってから、私は」

5/5/2023, 3:31:39 AM

私の住むこの世界には

大地なぞありはしない

人一人分の

ちょうど棺桶ほどのスペースだけ

そこに仰向けに寝転ぶとみえるのは

棺桶の形をした四角い蒼空

遠くから聞こえてくるのは

生ある世界でいきる雲雀の唄


雲が流れる?

いいえ、流れているのはこのわたし

雲はじっとそこにいて

流れていくわたしをみているだけ

唄もかわらずそこにいて

私の呼吸をたしかめる

まだいきているのか と


私が呼吸をあきらめたなら

雲雀はやがて憐れむように

私への鎮魂曲をうたいだすだろう

そのうたを聴きたいような

聴きたくないような


棺桶の中から両腕をあげ

青空に向かって 咆哮をあげる

身体中を血液が巡りだす


流れてはいくが

流されてはならない

それがこの世界で いきるということ







お題「大地に寝転び雲が流れる」

5/3/2023, 11:05:02 PM

歯を抜いた日の翌朝はゆっくり目を覚ます
昨夜飲んだ痛み止めのおかげか
今朝はどこも痛くない

「ありがたい」

顔を洗おうと蛇口をひねると
温めのお湯が出る

「ありがたい」

いい香りのフカフカのタオルは
柔軟剤を開発してくれたチームのおかげ

「ありがたい」

ドライヤーのスイッチを入れると
温かい風が心地よく髪を整えてくれる

「ありがたい」

コンロの火をつけてコーヒーを淹れる
スイッチを押して火がつくのも
ちょうどよい大きさの好みの柄のカップも
インスタントなのにフタを開けるたび
それなりに良い香りを放つ秀逸な製品も

すべてが「ありがたい」

ヨーグルトは独りでは作れない
牛とメーカーと乳酸菌と
きっと数え上げればきりがない手間

TVのリモコンに手を伸ばす
イタリアの片田舎の猫目線の風景
塀の上から飛び降りて背伸びをする

指一本で見知らぬ世界とつながるこの奇跡

すべてが すべてが 「ありがたい」


アプリを開くと
みなさんの「ありがとう」が溢れている

なんてやさしい世界


だから「ありがとう」を伝えたい相手は

私を取り巻く 私を構成する すべて

いまこれを目にしているあなたを含む 

すべてです。

         ありがとう






「ありがとう」

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