「ボーイフレンドが欲しい」
と友達なのか恋人かあいまいなことを言う私だけど
現実はそう甘くはない。
出会いの場が限られている私では
親しい間柄の同僚はいても
到底、彼氏なんて作れない。
夢という名の理想では
顔がカッコよくて、背が高くて、ユーモアがあって、
優しさも持ち合わせている。
現実に、そんな独身男性がいないかなと思うけど
その全てを装備している人は大抵、既婚者。
現実は理想とは逆だからこそ面白いこともあるだろう
誰かを好きになることよりも
自分を肯定するのが先かもしれない。
だから、私はおひとり様でいようと思う。
誰かと結ばれるのを諦めた先に
もしもの出会いがあるかもと
有名な誰かの自伝で教えてくれた。
もし、幸福と地獄が紙一重なら
私は今、その狭間にいるかもしれない。
職場で一人の仲間として歓迎されている私と
孤独いう名の爪弾きにされている同僚がいる。
私は任された仕事をこなせば感謝され
「大丈夫?」とか「一緒に頑張ろう」と
手を取り合ってみんなで一つの電車に乗って
ゴールのない職務に取り組む。
それが普通だと思っていた。
孤独という名の服を着た彼は
一人でも自分なりに淡々と仕事をこなしている。
「かわいそう」
と思うけど、彼には孤独にされた理由があるらしい。
私だってついこの前までは彼とも親しかった。
話そうと思えばいつだって話せばいい。
ただ、この光と闇の狭間では
明るい方を選ばなれけば私も地獄に落ちる。
彼を置き去りにするのは心が痛むけど
みんなの孤立にさせたい理由もわかる。
どうすればいいか。
これが今の職場での悩みの一つだ。
「好きだ」って言ったらあなたと私の見えない距離が
縮まる保証が欲しいだけだ
怖いけど君と僕との間には恋とは違う距離があるよね
映画館で同じシーンであなたも泣いていたから
初対面の日より近づいた?
その日、学校で嫌なことがあって私は泣いて帰った。
家の玄関の前で必死になって
溢れる涙を止めようとしたけど、止まらない。
声を殺して流れる涙をただ、ただ袖でぬぐった。
「どうしたの?」
お母さんの不安を乗せた声が家の中から聞こえる。
私は精一杯の明るい声で「大丈夫、ただいま」と
元気よく答えた。
玄関の扉がゆっくり開いた時には
私は涙を抑えられていた。
でも、お母さんの顔を見た瞬間。
涙はまた私の気持ちを表現する。
悲しみの涙を見られたくなくて、
嬉し涙と思わせて、お母さんな抱きついた。
涙声で「今日、いいことあった」と嘘をつく。
親は私の気持ちをすぐに察してくる。
「泣かないで。
あったかいココアを飲みながら話を聞くね」
お母さんはそう言って私のランドセルを下ろして
上着を脱がせた。
私は手を洗い、お母さんのいれてくれたココアを飲み
全てを話すことができた。
お母さんは丁寧なアドバイスをしてくれて
明日への恐怖心が少し和らいだ気がした。
朝、布団から出ようとして寒気が飛び込んでくると
「冬が始まったな」と身に染みて思う。
そうなると
もう時間をかけた意地との戦い。
「もう少し、あたたまろう」
「仕方ない。起きて寒気と戦うか」
その両者がいつまでも頭を駆け巡る。
最後は後者になるけど、
昨日の夜更かしなどがあるとすぐには厳しい。
冬は、温かいもので癒されるのが一番だけど
その『温かいもの』が朝は布団なのだ。