引きこもりから脱出してからのほうが
たくさん思い出がある。
障害者として社会に出るために
紡いできた経験が一つの本になるくらい
たくさん思い出がある。
恩師といえる方々も
そのほか知り合った初対面の人たちも
みんなはじめは障害者という色眼鏡で見たり
よそよそしいところがあったけど
関係を深めていくうちに
「なんだ本当はこういう人なんだ」
と私の長所や短所をわかってくれた。
その経験をした後に再会した同級生は
恐る恐る話しかけてきた。
そして私を裏切り爪弾きにしたことを泣いて謝った。
それを私は笑顔でチャラにした。
本当は許せないこともあるけど
過去をチャラにできるくらい私は
強くなれたかもしれない。
その同級生は普通の幸せを手に入れていた。
でも、私と離れた後の経緯を知って泣いていた。
たくさんの思い出が重なって
今の私が形成され素知らぬ顔であの同級生と話せた。
はじめは誰だって相手がどんな人かわからない。
だけど、お互いに色眼鏡なしに関われるかどうかで
その人との未来の思い出が変わってくる。
自分自身の未来の性格も変わってくる。
そんなことをお題から今日改めて思った。
「冬になったらイルミネーションを見ようね」
そう約束した今年の夏をあの人は覚えているかな?
私はあの頃をまだ思い出にできないから
できればあの人に伝えたい。
「楽しい頃の雪が溶けても心にはまだ積もってるよ」
「絶対にお迎えに来るからね」
その一言を言った時の母の顔は脳面のようだった。
「本当のお迎えなんてないんだろう」
そのとき私は幼心にそう思った。
これからこの施設という学校のような場所で
どんな暮らしをするのか不安しかなかった。
母とはなればなれになって半年が経った。
今でも思う。
母はこれからもずっと迎えなんかに来ない。
今だから思う。
私はこれからもずっと新しい友達と遊べる。
母とはなればなれになったけど
同じ境遇を経てる友達だからこそ
分かり合えるものがあって
母の心はずっと想像もできないんだ。
君が寂しさから逃げてきた子猫ならば
ぼくがずっとかくまってあげる。
孤独という名の傷を手当てして
温もりという名のご飯を与える。
それからはずっと、ぼくがそばにいるから。
ぼくは君の心を痛めないと無期限の保証をする。
君のことを好きだから
ぼくは死ぬまで君に愛というものを教えるよ。
ぼくは命ある限り君を守り続けるよ。
半袖の私にキリリと寒さを刺す秋風。
どこかで冬が近づく予感をさせるこの風に
私はいつも遠いところにいる彼を想う。
「君は何してる?」
この季節の空に送る空気のようなメッセージには
いつもほのかに焼き芋のような甘さが漂う。