君が寂しさから逃げてきた子猫ならば
ぼくがずっとかくまってあげる。
孤独という名の傷を手当てして
温もりという名のご飯を与える。
それからはずっと、ぼくがそばにいるから。
ぼくは君の心を痛めないと無期限の保証をする。
君のことを好きだから
ぼくは死ぬまで君に愛というものを教えるよ。
ぼくは命ある限り君を守り続けるよ。
半袖の私にキリリと寒さを刺す秋風。
どこかで冬が近づく予感をさせるこの風に
私はいつも遠いところにいる彼を想う。
「君は何してる?」
この季節の空に送る空気のようなメッセージには
いつもほのかに焼き芋のような甘さが漂う。
『また会いましょう』というお題を見ると
米津の『さよーならまたいつか』を思い出す。
そしてあの人を思い出す。
調子が悪いと言った職場のある先輩の顔色は悪く、
今すぐにでもと早退を促したがその日も職務を務めた
本人によると胃に疾患があるらしく
死期が近いらしい。
「もう長くはない」という彼女の言葉は
本当のことだと分かっているが嘘だと思いたかった。
それから数日後。
彼女は入院のため退職した。
私は食べられないのを分かっていても
好物のお菓子をお見舞いのときに持って行った。
土産話は職場のことではなく共通の趣味の話だった。
「早く元気になってね」
そんな思いで土産話を探し回って
日替わり弁当のようにいろんな話をした。
彼女のささやかな笑顔見られるのが嬉しくて
私は時間の合間を縫ってお見舞いに行った。
ある日。彼女は私に言った。
「自宅療養になるかもしれない。
だけど、もしそうなったら家に来て。
私はあなたの土産話が一番の薬よ。
また会いましょう。また聞かせてよ」
それから半年が経つが彼女はまだ生きている。
この生活がいつまで続くかわからないけど、
私は今日も会いに行く。
私は今日も話に行く。
ネタが尽きたら別の話題を見つけて
新しい土産話のネタにする。
彼女か「さよーなら、またいつか」
と来世の再会を告げるまで私は会いに行く。
初めてスリルを感じたのは高校生の頃だった。
当時付き合っていた同級生の彼氏の家に
お互いの親には内緒で潜り込んで
抱き合うという大人だけど子供らしい初体験だった。
お互いの親には自分たちのことを隠していた。
だから、彼の家に入るだけでも
ドキドキハラハラのミッション。
計画は無事に成功した。
かと思ったけど、
二人で家を出るとき、
パートから帰宅した彼氏のお母さんと鉢合わせた。
私は心臓が飛び出しそうなくらい驚いて
過呼吸になりそうだった。
彼は言った。
友達ではなく、彼女だと自分の母親に。
その日以来、彼のお母さんとも少しずつ仲良くなった
でも、お母さんが家にいない時を狙っては抱き合った
あの時のようなスリルはもう味わえないかもしれなけど、
とても楽しい思い出となった。
ケガをしてぼろぼろの翼を私は持っている。
飛べない理由を自分の未熟さだと感じてるから、
成長したいと思うけど、なかなか難しい。
前に進むのが怖いと思う。
踏み出せない自分がいる。
もし翼を治せるなら、
もし今より成長できたら、
もう一度飛んでみたい。
私の知らない世界を知るために。
かつて会う約束をしたあの子と笑顔で会えるように。