根暗な私はクラスの中の影のような存在だった。
写真を撮ると心霊写真の主役みたいな私。
ずっとその幽霊の役割を果たさなくてはいけない、
そう思っていた。
彼女に出会うまでは。
中学二年の夏。
ある日その子は転校生としてやってきた。
「初めまして、◯◯と申します。
ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
(なんて丁寧な子なんだろう)
私はそう思った。
その丁寧さが誠実さの表れだった。
彼女の着飾らない素直で積極的な性格と可愛らしさが
相まって彼女はすぐにクラスのみんなと打ち解けた。
私だけやっぱり彼女とも話せなかった。
でも、彼女を見ていると
「何か行動に移さなきゃ」と思わせる魅力を感じる。
その『何か』がわからず私はもがいていた。
(あの子と仲良くなりたい。でも、どうすれば)
そう思っていると私はふと思い立った。
彼女がクラスの子とくすぐり合っているのを見て
私はふと椅子から立ち上がり
彼女に精一杯の大きな声で
「かめはめ波」と言いながらポーズを決めた。
それを見た彼女や他のクラスメイトは、あぜんとした。
そして、沈黙の後に爆笑の渦が沸いた。
かめはめ波をやったのをきっかけで
私は少しずつ彼女と気兼ねなく話せるようになった。
その様子を見たクラスメイトは
「◯◯さん変わったね」
と言われて、徐々にみんなと親しくなれた。
あのたった一つの行動で
彼女とはクラスの中で一番仲の良い友達になれた。
ケンカして君の心が私から離れていく
「行かないで」
と叫んでも君は振り向くこともない
「君の代わりなんていない」
あの時そう言っていれば
ずっと君はそばにいてくれたの?
私は君だけは手放したくなかったよ
私がいる「現在地」から「目的地」に着くまで
どのくらいの距離があるだろう。
ここから果てしなく遠い「目的地」のその先も
いつまでもこの青い空が続くとは限らないと思う。
今のような穏やかな青い空のように平坦な道も
あの頃のようなツラい土砂降りのでこぼこ道も
昔のように母と乗り越えた通り雨のような上り坂も
全てがこれからに置いてもあるだろう
だけど私の心は何があっても挫けない、
どこまでも続く青い空のようだと信じてる。
「目的地」に向かってひたすら歩くのみ。
誰も知らないこの道を一人でGoogleマップも使わずに
制服が可愛いからと選んだ
でも実際にその高校に入学できると
部活というまた別の世界を知って
青春というまた新たに一つ人を知る
衣替えをする度にまた一歩大人に近づいたとまた思う
好きなのに行動だけでは伝わらないから手紙を書いた
手紙なら文字が私の心を代わりに伝えてくれる
そう思っていた
でも彼は文字を読むのが苦手な障害を持っている
そんなことを知らない私は
彼に強く問い詰めてしまった
「どうして?なんで答えをくれないの?」
「文字がわからない」
始めはその一言の意味がわからなかった
見え透いた嘘をついていると思ったけど
ネットで調べたら
『ディスレクシア』と出てきた
その説明を読んでいくうちに私が止まらなかった
「なんでわかろうとしなかったんだろう」
親の転勤で引越しが決まった彼に声で訴えた
最後の登校で初めて知った引越しの件
誰もいないオレンジの空が似合う雲が浮かぶ空の下で
私は、声が枯れるまで謝罪の言葉を叫んだ
「ごめんね!わかってあげられなくて。でも!私は」
そして最後にかすれ始めた声に
「好きだよ」を言った
彼は大きな声で
「ありがとう」とだけ言った
その言葉に私は精一杯の笑顔で応えた