ネジが外れたウサギ

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10/13/2024, 6:18:27 AM

「放課後の制服デート憧れてるんだよね」

そう言ってキラキラした眼で俺を見つめる先輩。


(俺だって憧れてる。先輩となら)

と思いつつも「そうなんすね」と軽く返す。

「そんな態度取らなくてもいいじゃん」

「いや、別に」

「もしかして照れてるの?」

赤らめた頬をマスクで隠してるのに

泳いでる目は気持ちをバラす。

「照れてないし」

「うそー!だったら、絶対やろー」

ニヤつく顔を誤魔化すために俺はぶっきらぼうに

「はい、行きましょう。放課後、映画で見ませんか?」

と勇気を出して言ってみた。すると、


「映画見たい!私さ、傲慢と善良が気になってて。

ストーリーも面白いと思うんだけど、藤ヶ谷くんが好きで」


(おい、そっちかよ)

と軽くため息をつき、

満面の笑みで「俺は恋愛映画が好きなんですよ」

と軽く嘘をついた。

すると、先輩は「可愛い」と言って俺の頭を撫でた。



平日の水曜日の夕方にもかかわらず

映画館はカップルと女子高生で溢れていた。

水曜日の今日はレディースデーだから女性客が多い。

先輩の何気ない一言から出た俺の提案が功を奏した。



話題の小説だから、

読書好きの友人から勧められて読んだことはある。

まさか、先輩が藤ヶ谷ファンとは思わなかった。

だって、俺はあんなにカッコよくねぇし。


映画を見てるときの先輩は登場人物に感情移入してる。

それくらいこのストーリーが好みなのだろう。

眼をキラキラさせたり、頬に涙が伝ったり。


「映画、面白かったね!」

「そうっすね」

「まさか、あの展開で終わると思わなかったな」

「俺も、です。見入っちゃいましたよ」

「それな!翔太くんの前で言うのは悪いけど、
藤ヶ谷くん、めっちゃカッコよかったなー」

「そう、ですね」

「あっ!ごめん。そんなつもりじゃなかった」

「いいっすよ、気にしなくて。
それより、そこのクレーンゲームで欲しいもの取ってあげます。俺、得意なんで」

「えっ!悪いよ」

「全然いいですって。どれがいいですか?」

「うーん。お言葉に甘えて、あのちいかわのクッション」

「はい、かしこまりました」


俺は1000円をかけて先輩のリクエストに応えた。

先輩は「今日から抱き枕にする」と言って

とても嬉しそうだった。


初の放課後の制服デートの締めは

先輩からのお礼で撮ったプリクラに映る、

俺の頬にキスをしてる乙女な先輩だった。


10/12/2024, 4:43:37 AM

秋風がレースカーテンなびいてる心奪った君思い出す


模様替えすると決めたらカーテンを最初に選ぶ彼は写真家


ひまわりが咲いたカーテン台風が上陸した日は泣いている

10/11/2024, 6:33:39 AM

『不意の涙』


あれは初めて嬉し泣きをした宝物のような日だった。



ある日の夜。

俺は母と声が枯れるくらいの大げんかをした。

けんかの原因は進路のこと。

俺は就職したいと言ってるのに、

母は大学に行けと言う。

それだけのこと。


翌朝、誰にも何も言わずにいつもより早く家を出た。

言わなかったんじゃない。

お父さんと顔を合わせたとき、声が出なかった。

それでも、俺はお父さんとさえ話をしたくなかった。

理由は、どっちの味方でもない傍観者だから。



学校へ着いてクラスメートからあいさつを受けても

手を振るだけで「おはよう」も言えなかった。



何も知らない、

何も障害がない家庭のみんなに嫉妬していたのだろう

 

唯一、俺の気持ちをくんでくれた女子がいた。

挨拶しか交わしたことのない陰キャな女子。

なぜか手紙をくれた。

「なんか元気ないね。何かあった?」

手紙にはそう書いてある。

でも、ろくに会話すらしたことのないやつに

俺の気持ちなんかわかるもんかと思って、

「別に。親とけんかしただけ」

とだけ書いた。

「ふーん」とか「大変だったね」で終わるかと思った。


「私の家はね、母子家庭なの。

でも、最近の母は酒に入り浸ってるから

私のバイト代で毎日を過ごしてる。

ギリギリの生活なのに母は酒にお金をかけてる。

私と母は毎日が口頭での戦争。

高瀬くんのけんかの理由と比べたら

こっちなんて野暮ったいかもしれないけど、

親って面倒くさいよね」


その事情を隠しながら陰キャの羽田は学校で

普通に勉強して、そつなくバイトしてるのか。

そんな彼女の事情を知って俺は自分が情けなくなった。

ちっぽけな理由で、

こんな暮らしをしてる自分を殴りたくなった。


「羽田も苦労してるんだな。

でも、俺より断然カッコいいじゃん。

ちゃんと家のためにバイトしながら学校に通うなんて。

俺なんかさ、自分の進路でもめてるんだぜ。

母は俺の心配をしてくれてんのに、

俺は何もわかってない」



「私は高瀬くんのこといつも見てるけど、

高瀬くんのほうがカッコいいと思う。

見た目の問題ではなくて、心のこと。

困ってる子がいたら

必ず声をかけて手を差し伸べるのを見てるよ。

高瀬くんの優しいところに惹かれてる自分がいるんだ」



最後の一言に俺はついドキッとした。

俺は羽田の肩をポンと軽く叩いて体育館の裏に促した。



やっとの思いで顔を赤ながら出た第一声は

「俺を褒めてくれてありがとう」だった。

「いいよ、そんなの。私、好きだよ」

「え?」

「私言ったじゃん。高瀬くんに惹かれてるって」

「マジかよ。俺でよければ…付き合うけど」

「えっ!ほんとに?」

「うん」

ありがとー!と言って抱きつく羽田の温もりに

俺はその日初めて涙を流した。

こんな状況で泣くなんて恥ずかしい。

でも、あの羽田に心を認められたような気がしたのが

嬉しくて涙が出たと思う。



帰ったらお母さんに謝ろう。

そして、進路をしっかり考えよう。

羽田という強い彼女より男らしくなるために。

10/10/2024, 6:15:14 AM

連続ドラマが佳境に入ると次の回が気になって

テレビの番組表のあらすじを読んで想像してみる。

続きが気になって

想いにふけると登場人物に感情移入している時もある


映画だとその日で完結するけど、

連続ドラマは三ヶ月くらい続く。


心が踊るようなドラマに出会うとその三ヶ月間は

創作意欲がより湧く時期となる

10/9/2024, 4:43:05 AM

仕事のある日はいつも朝からバタバタ。

だけど、仕事が終わった後の大好きな一杯は

休日の味より数倍も違う。


苦しかった仕事に関することを「嫌だな」と考えず

「よく頑張ってやってきた」とプラスに考えて

束の間の休息でもあるこの『大好きな一杯』を

楽しむことが一番だと。


私はさまざまな人や経験から教わった。

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