ネジが外れたウサギ

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9/30/2024, 6:36:07 AM

誰もいない部屋の中で音のないピアノを弾く。

想像の音階でメロディを脳に描いていく。


なぜ音が出ないのか。

その理由はただ一つ。


この部屋の音は全てあのぬいぐるみが吸収してるから


あの謎のキャラクターのぬいぐるみの眼には

音を集約する力がある。


目覚めたらこの部屋にいた私には

ここにいる理由がわからない。


ただ一つ分かっているのは

あのぬいぐるみは

大好きな亡き恋人の形見だということ。

9/29/2024, 6:40:58 AM

最後のデートだと分かっていたなら

別れ際にキスをしたかった。

最後の思い出を最高にするには

君の好きなカフェラテの味のキスで幕を閉じるのが

最適だと思った。


だけど、もう遅いかな。


僕たちはもう会えない。

なぜなら、君は僕の知らない街に行ってしまったから。


もう一度会えたら言いたい。

「僕にとって一番最高の言葉をくれたのは君だよ。

『外見以上に貴方の心は男らしいよ』

なんて言ってくれた人は後にも先にもいないから」


9/28/2024, 4:14:45 AM

昨晩の私の苦しみは冬のような通り雨だったのか

一晩中、涙が枯れるほど泣きはらした

理由などない

突然だったから


心をえぐられている

そんな痛みであり、そんな切なさであった


それが翌朝のお日様の光で幻想的な虹が現れた

とても、勇気が湧いてくるほど前向きになった

理由などない

突然だったから


心に包帯を巻かれている

そんな温もりであり、そんな心地よさだった


あの通り雨は私の冬だった

もしかしたら、誰かの心に来たかもしれない

通り雨を降らせる雲は消すことはできないだろう

それでも、通り雨は必ず過ぎて春を呼んでくれる


私がそうであったように

君にもその時が来ると信じている

9/27/2024, 6:46:19 AM

秋になると必ずあの人を思い出す。

五年前の秋に出会い、

三年前の春に海外へ行ってしまったあの人に。


彼は今どうしているのだろうか。

恋人ではなく、友達でもない。

私を変えた恩師。


今年の秋に帰国すると夏に手紙を寄越してきた。

再会したら、まず最初に花束をあげたい。

花言葉の通り、

思い出の詰まったチョコレートコスモスの花束を。

9/26/2024, 6:13:04 AM

当時付き合っていた彼氏の家の窓からは

棚田が広がっていた。

「昔、俺あの山の傾斜でよく転がったよ」

「えーっ!よくそれを平気で言えるね、逆にすごい」

「まあ、今は普通に生きてるし」

彼の無邪気なその笑顔に、

私は母性を少しくすぐられた気がした。

転んでも泣かない強い幼子のようで誇らしく思った。



もし、今の旦那との間に子供が生まれたら

あの窓から見た景色のような田舎に引っ越そうか。

自然豊かな暮らしを幼い頃に経験させてあげたい。

商業施設は近くにないし、危険が多いのは承知してる。


でも、のびのびと育ってほしい。

しがらみのない場所で経験したことを、

いつか何かで表現できる子になってほしいから。

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