この街の中心にそびえ立つ塔
真上にある満月が全てを照らし
全ての影を作っていた
一人の少女はそんな塔の屋上に立っていた
風が強くて体を揺らし
彼らのように突き落とそうとしてくる
ゆっくりと一回転し街を見渡す
ビル群は残業成果の灯りが並び
住宅街は睡眠時間だと強制するように静かだ
大好きで
大っ嫌いなこの街
月に向かって手を伸ばした
だれか助けてくれる人が降って来ないかなって
そんな期待をした
でもその期待を裏切るように
何が月から降りてくる
あれは一体?
お題『街』
『死ぬまでにはやりたいことノート』
空っぽの部屋の床に
この一冊だけがポツンと置いてあった
昨日この部屋は全て片付けたはずなのに
起きて様子を見たら既に置いてあった
この家にはもう自分一人しかいないし
強盗とかが侵入した形跡もなかった
ではなぜこのノートがここにある?
恐る恐るノートをぺらりと開く
そこには一つの言葉だけが刻まれていた
『生きる』
ぽろぽろと涙がこぼれノートに落ちる
悲しかった とにかく悲しかった
これしか願いがなかったなんて
それすらも
それすらも叶えられなかったなんて
早朝の朝日が差し込む部屋で
一人ぼっちの男性が泣いていた
お題『やりたいこと』
眠気全開の顔に
カーテンの隙間から溢れる朝日が当たる
ごしごしと目を擦り
気怠げにゆっくりと身体を起こす
つい二日までまであんなに寒かったのに
冬なんてなかったよと言わんばかりに温かい
外からちゅんちゅんとすずめの鳴き声が聞こえてくる
さあ
支度をして出かけよう
今日から新しい人生だ
顔を洗い
朝ごはんを食べ
服に着替えた
外からごみ収集トラックの音が聞こえ
バタバタと準備を終える
少し匂いがきつい香水をかけ
何かがはみ出ているゴミ袋を持って
駆け足で外に出た
お題『朝日の温もり』
二つの手が僕の目の前に差し出された
一人は緑の少年
僕の弟子だ
もう一人は赤の少女
僕の幼馴染だ
今僕は岐路にいる
どちらかの手を取れば
どちらかと別れなければならない
どちらかの幸福を得て
どちらかの不幸せを得る
怖い
怖くてしょうがない
どちらかを見捨てるのも
自分が後悔するのも
だから僕は
どちらも選ばなかった
二人とも救える道があると信じて
今僕は
自ら開拓した岐路を歩き始めた
お題『岐路』
ごうごうと隕石が降り注がれる
たくさんの人が働く高層ビルに
賑やかな観光地に
元気が溢れる学校に
慈悲などなく全ての命を奪っていく
そんな光景を僕はただぼーっと眺めていた
足元には炎の海が広がって
沢山の死体が群がっていた
隣にはあの子だった物が存在している
せめてさいごに
きみといたかったな
お題『世界の終わりに君と』