手がかじかむ
寒さが痛みに変わり
感覚が無くなってくる
体育座りで床に座る
目の前を人達が通り過ぎる
疑問と嫌悪感の目でこちらを見る
日は沈み ビルに光が灯っていく
中には声をかけてくる人もいた
じろじろと特定の部分だけを見てくる
でも全て断った
だってあの人を待っているんだもの
退社時間から2時間たった
この道を通るはずなのに 全く見かけない
寒さが体を侵食していく
それでも私は待つのをやめない
あなたに会うために
お題『寒さが身に染みて』
おめでとう
そういって君は微笑んだ
お酒を持ってきて
グラスに注いでくれた
初めてのお酒も
初めての煙草も
君と飲んだし 君と吸った
おめでとう
そういって僕は微笑んだ
お酒を持ってきて
グラスに注ぐ
煙草は吸いたくないらしいから
一緒に弱めのお酒を飲んだ
あの時あの人がやってくれたことを
今度は僕がする番だ
20歳おめでとう
お題『20歳』
三日月のネックレス
それを手に取った
「……」
女性しかいない店の中で
気まずそうに立ち尽くしていた
でもあの子に似合うのはこれしかない
そんな確信があった
値段のプレートを見て、財布の中身を確認する。
「ッスーー」
いや…大丈夫……大丈夫…
心の中で言い聞かせながら
商品を手に取りレジに向かう
でもよくよく考えてみれば
これで笑顔が見れるのなら
安い買い物だな
悩んでいる時とは打って変わった笑顔で
店員さんに声をかけた
「お願いします」
お題『三日月』
ビルの屋上から下を見下ろす
皆色とりどりの傘を身につけ
各々の目的に沿って歩いていく
洪水のような津波のような
色んな色の傘がうねっていた
「あ」
ふと声を漏らす
見覚えのある傘があったからだ
あの人は…
よく見ようと目を凝らす
仲良さそうに話し合う男女二人
あの傘は…
私が彼にプレゼントした傘だ
「やっぱり」
私の心の傘が真っ赤に染まっていく
数秒の沈黙の内
ずっと手に持っていたそれを下に投げた
この傘を全部真っ赤にする為に
お題『色とりどり』
パラパラと白い雪が降る
来ているコートに小さな雪が
落ちていく
私は
この光景が好きだ
あの時彼と一緒に見たあの日
あの時を思い出すからだ
お題『雪』