ふうり

Open App
10/10/2023, 11:13:39 AM

1人の少年が、とある墓地の前で手を合わせていた。
彼は俯いて、涙を溢していた。
言葉を発さずそのままの体勢で、暫くの時間が経った。
ふと、彼が言葉をこぼす。

「皆んなが幸せな世界って…どうすれば良いんだよ…」

自分の中では、納得がいっていないような表情をし、立ち上がる。

「叶えるから、絶対。」

切り替えるように、自分自身に聞かせたように、喋る。
突如、スマホの着信音が鞄の中から、聞こえてくる。
画面を見ると、友達の沢海からだった。
泣き声を聞かせないように、深呼吸をし、電話に出る。

「もしもし」
「もしもしぃ?風真?今どこ?」
「何処でも良いだろ。なんのようだ」
「丁度補習終わってさ、近くに居るならゲーセンでも一緒に行きたいなって。優人もいるぞ」
「そうか 近いから行く」
「お、OK〜じゃ待ってるわ」

電話を切り、学校に向かう。
涙を悟らせないように、いつもの表情を保つ。

お題『涙の理由』

10/9/2023, 11:18:39 AM

「ENJOY♪音楽は鳴り続ける
IT‘S JOIN届けたい胸の鼓動〜」

梨花は、イヤホンでココロオドルを聞き、口ずさみながら夜の道を歩いていた。
雪と別れた後、ふとお菓子が食べたくなり、コンビニまで向かったのだ。
レジ袋をがさがさと持ちながら、るんるんに歩いていく。

日が落ち、暗闇に侵食していった道の怖さを和らげるために、この曲を聞いている。
題名の通り、心が躍る曲だ。

ふと、自身の手に違和感を感じた。
袋を持っていない方の手、左手を見ると、手が黒に染まっていた。

「ひっ!?」

墨汁でも溢したようなその手に驚き、顔を遠ざける。
自分でも何が起きているかわからない
手を閉じたり開いたりする ちゃんと連動し、自身の手だと理解ができる。
しかし、このような色になっている理由に心当たりは無い。

「と、とりあえずお母さん達に相談しよう…うん」

少し距離のある道を、駆け足で走る。

これが、物語の始まりとは知らずに。

お題『ココロオドル』

10/8/2023, 10:59:13 AM

後に、最終決戦日と呼ばれる日。
沢海と優人は、人型の漆黒獣に囲まれていた。

「優人、これ突破できるか?」
「難しいね…だけどやってみる」

アイコンタクトを取り、同時に攻撃をする。
優人の盾で敵を突き飛ばし、沢海の放った矢で、道を作る。
思わぬ攻撃に、漆黒獣達は動揺していた。

「今だ!」

沢海の声と同時に、2人は包囲を突破する。
そのまま、空いた部屋に転がり込む。
周囲にある家具を、扉の前に置き、バリケードを作る。
優人は、背負っていたリュックから、宝玉を取り出し、床に置く。
宝玉からは、淡い桜色の光が輝いている。

「これは?」
「優花さんから貰ったんだ 
この周囲には、漆黒獣が入って来れないんだって。」
「へー便利な道具だな てことは、暫くは休憩出来るってことか。」
「うん そういうこと」

優人が喋りながら、リュックサックの中を、ゴソゴソと漁り、何かを取り出す。

「はい、ジュース。」
「お!助かる〜喉カラッカラ、おまけに糖分も足りて無かったんだ。」

沢海は、嬉しそうにジュースを受け取り、キャップを取って、早速飲み始める。

「ぷは〜!戦い疲れた体に染み渡る〜」

気持ちよくジュースを飲む沢海を、優人が微笑ましそうに眺めていた。

「沢海くんさ、変わったよね。」
「え、そうか? 寧ろ前の状態に戻ってないか?」
「えっと、確かにテンションは、通り雨が降る前と変わらないけど。」
「なんというか、色々相談してくれたから…変わって見えるなって。」

少しの間の沈黙が訪れる

「そう…だな ちゃんと説明しようって、決めてたからな。」
「嬉しかったよ 言ってくれて 信頼されてるなって感じたから。」
「おう 勿論」

ガタガタと扉の外から、物音が聞こえてくる。
どうやら、漆黒獣が来てしまったらしい。

「おっと、休憩は終わりか。」

沢海が立ち上がり、弓を取り出す。
漆黒の色をしているが、矢は綺麗な白色だった。

「ジュースありがとな 美味かった」
「それなら良かった」

優人も立ち上がりながら、リュックサックを背負い、盾を取り出す。
漆黒の色をしているが、真ん中に白いエンブレムが描かれている。

「さて、あいつに会いに行くか。」
「うん。ちゃんとあのことを教えてあげなくちゃ。」

宝玉を拾い上げたその瞬間、扉が破壊される。

束の間の休息が終わり、2人の少年達は、親友に会いに行くために戦いを再開した。

お題『束の間の休息』

10/7/2023, 11:09:59 AM

力を込めて、目の前にいる化け物を殴りつける。
終わりなんて存在しないような数に、圧倒されながらも、諦めずに殴り続ける。

傍から見たらどっちが化け物か分からないだろう。
私自身も、化け物なのだから。
体が漆黒に染まり、手はもはや、手の形では無くなっている。
背中には、赤黒く大きな羽が生えており、体は2Mを優に超えていた。
これの何処が人間なんだろうか

いっそ死んでしまいたい
そう思う
だけど、私は守りたい。
大切な親友を、雪を、この手で守る。

私を造ったあの人を、憎む。
だけど、守れる力をくれたのも、あの人だ。

後ろで雪が叫んでいる
きっと、もうやめてとか、そんな感じだろう。
ごめんね、それには応えられない。
なんとしてでも、守りたいんだ。
仲良くしてくれて、私を否定しなかった雪を。

人間としての意識が無くなりそうになる
でも、私は止まらない。
力を込めて、殴り続けた。

お題『力を込めて』

10/6/2023, 11:27:34 AM

「優花さん、買ってきましたよー」

事務所の玄関から、両手に袋を持った優人が帰ってきた。

「おーおかえり 探してたものはあったか?」
「はい、ありました! 後、これお土産です。」

そう言って差し出したのは、コンビニのショートケーキだった。

「優花さん、好きそうだなって思って。
安かったんで買っちゃいました」

こちらの反応を気にするように、顔を向ける。

「あれ、もしかして嫌いだったり…」
「いや、別に嫌いじゃ無い。ただ…」
「ただ?」
「少し、昔の事を思い出してな。」

優人が興味津々に、私の隣に座る。

「なんだ」
「優花さんの昔話、聞きたいです。」
「昔話をするほどのことじゃない
友達が、今みたいにショートケーキ買ってきてな。」
ショートケーキを見ながら、あの頃を思い出す。


「なぁ、優花 これ、やるよ。」

勝が差し出したのは、コンビニのショートケーキだった。

「ん、なんで?」
「なんか好きそうだったから!」

バカっぽい答えに、ハトが豆鉄砲を喰らったような顔をしてしまう。

「そんな理由で?」
「おう!あ、嫌いだっか?だったら俺が食っちm」
「いや、食べる。」

真顔で言いながら、食われないように、すぐさまショートケーキを奪い取る。

「よし、じゃあ俺もなんか食おうかな~」

勝が、袋をガサゴソと漁りはじめる。
遠くから、ドアの開く音がして、ルーナと幽夜が入ってきた。

「帰りましたわ〜あら?」
「おやおや、もう食べているようだね。」
「ずるいですわ〜!私も混ぜなさい!」

いつも通りの、わちゃわちゃが帰ってきた。


「ま、そんなことがあったんだよ。」
「良いですね、青春って感じがして。」
「まーな」
「そのお友達は、今でも仲が良いんですか?」
「……」

私が答えられず、黙っていると、外から夕焼けチャイムの音がする。

「おっと、もうこんな時間か。ほら、行くぞ。」

そそくさと、支度を済ませる。
その様子を見て、慌てながら優人も支度を始める。

「あ、ちょっと待ってくださいよ!」

明るさと暗さの境界線の時間に、優しい2人が出かける。
優しい女性は、過去と今の事を思いながら、歩く。
もう、あの時のように失いたくない。と

お題『過ぎた日を思う』

Next