好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い…やっぱり、上手くいかないな…諦めた方がいいのかな。もう一度、やってみる。
好き、嫌い、好き、嫌い、好き…えっ?諦めちゃ駄目だってこと?もう、どうしたらいいの?
あの人に思いを伝えようか迷ってる…花占い…なんて、私の柄にないことやって…あの人は私のこと、どう思ってるんだろう…
こんなこと考えてたら、また、眠れなくなっちゃうんだな…これが。
こんなに天気が良かったのに…久し振りに晴れたって思ったら、周りがだんだん暗くなってきちゃって…どうしよう…
あれ?あれ?さっきよりも暗さが深くなった気がする…それに冷たい、何、雨?あー、最悪。折りたたみの傘あったよね…あれ、雨音が傘にあたらない。気付いたら頬が濡れてる。
雨の正体は私だった…駄目、止まらないや。ずっとずっと我慢してたな…辛いことがあっても頑張って乗り切ってた。そんな繰り返しだった。早く帰らなきゃ…こんな姿、人に見られたくない。心の雨が水溜まりにならないように。
身体に絡みついた糸。だけど、鎖のように重く感じる。そうだったんだ、君が僕にこのようにしたかったんだね…君がどれだけ苦しんだことを表したかったんだね。
「今更…?ようやく気付いてくれたんだ。」
君の冷たい視線が僕に刺さる。そして、不敵な笑みを浮かべる。君をこんなに怖く感じたことがあったか…
「僕はどうしたら良い?」
君は黙ったまま、僕に近付くと、抱きしめた。力強く…そして、また僕に糸を絡み付けた。
「何も…ただ、この私を受け入れてくれれば良い。」
僕の愛した恋人 (きみ)は人間 (ひと)ではなく、蜘蛛だった…
「私を受け入れて…そして、大人しく私の一部になって…」
『好きだ』
本当は君に伝えたかった。ずっとずっと…
伝えなければって思うのに、勇気が出なかった。
「好き」
実は私も伝えたかった。ずっとずっと…
こんな私を好きになってくれるか分からなかったから。
届かない思いが交差し、何処かへ消えていく。
シャボン玉のように…
僕は誰?
いったい、ここは何処?何も分からない…
あなたは何も覚えていないのね…
あなたは私が愛した恋人 (ひと)。
そして、憎んだ人。ここは私とあなたが初めて
出会った場所。
あなたはあの日、助けてくれた。
君は…僕をどうするの?僕は君に何をしたら良い?
あなたに何も求めない…ただ、このまま傍にいてくれさえすれば良い…
僕は、君が誰だか分からない…僕は君に何をしたの?
それをこれから一緒に見に行くのよ…私とあなたで。
だから、もう一度、出会うのよ…
もう今までの私たちではなく、新しい私たちと出会う旅をしましょう。今は何も思い出さなくても良い。
あなたが何もかも思い出した瞬間 (とき)、私はあなたをもう一度愛する。あなたが私に向けてくれた歪みに歪みまくった愛情で…
『記憶の地図』