今日、大切だと思えた君と離れてしまった。君がいなくなって、元々、殺風景な部屋だったのが、君がいなくなって、より一層、殺風景な部屋感が増してしまった。
切り替える為に、少しずつ思い出を整理していく。ふと、2つのマグカップに目がいく。デートでお揃いの物が欲しい…となって『初めて』のお揃いがマグカップだった。
朝に入れたコーヒーを自分が使っていたマグカップに注いだ。コーヒーの香りを楽しむ余裕なんかない。飲む度に、一緒にコーヒーを飲んだ思い出が立ち上がる。
「前を向かなきゃ。向かなくちゃいけないんだ。」
コーヒーを君との思い出と共に飲み干す。後は綺麗に洗って…その後の行方はまた、考えることにする。でも、もう二度と触れることはないようにするかもしれない。持っていたということすら、忘れてしまうくらい。
もしも、君が僕の前からいなくなったら…
ただただ恐いんだ。僕はどうしたら良いか分からなくなる。そんな不安を吹き飛ばすくらいの君の笑顔が今も僕の傍にある。
「どうしたの?」
僕はハッとした。君が心配そうな表情 (かお)で見つめてくる。
「ううん、何でもないよ。」
僕はそう伝える。僕は君に笑顔を向ける。安心した君は微笑み、僕の手を握る。僕も手を握り返す。
僕はこの手を離さない。ずっと一緒にいるんだ。
僕たちの中に『If』の世界はないから。
耳を澄ますと、風の声。鳥の声。雨の音。無意識に自然の音色に聴き入り、身体をどっぷりとその奏でられたメロディに浸ることが出来る。
街の雑踏。人の声。本を捲る音。耳はいつもありとあらゆるメロディを聴いている。
あなたは今、どんなメロディに浸っている?
あなたが聴きたい、あなただけのメロディはいつも、傍にあるから。
私を愛してくれる人はこの指止まれ!
そう言って指を掴んでくれる人はどれだけいるのかな?
…いると良いな。
ふと一人になると、時折、自分の耳に何も音色 (おと)を入れたくなくなる。もう一人の自分と対話をしたいから。『今、私は何がしたい?』『気分は?』など、もう一人の自分に尋ねていく。上手くキャッチボールが出来ているか…なんて分からない。それで良いことにしてる。あまり、考えすぎてもいけないから。結局、言葉のキャッチボールは上手くいかず、時間の無駄使いをしてしまう。
自分との対話をしてる間に雨が降っていることに気付く。基本、偏頭痛持ちからすると、天気の関係で頭痛がしたり、気分が沈んでしまうことだってある。でも、雨音は好き。規則正しく奏でていることもあれば、そうじゃないこともあるけど、それが好きだって思えることもある。私は我儘?
『雨は嫌、でも、雨音は好き。』
こんなふうに言っても良いよね?
琥珀