日本のお菓子は「優しい甘さ」である。
これが別の国へ行くと「物足りない」という。
だから、毎日外国出身の夫にはたっぷり砂糖を使ったお菓子をあげている。
おいしそうに食べる夫を見て、私は思わず微笑む。
そんな風に「優しくない甘さ」のお菓子を食べ続けていれば、いつか、夫は体を壊すだろう。
そしたら私は自由になるのだ。
その日まで、優しい振りをしながら、食べさせ続ける。
すぐに死ぬ毒とか使わないだけ、私は優しいでしょう?
「ミッドナイト? ふざけてんのか! 真夜中でいいだろ、真夜中で!
なんでわざわざシャレたカタカナ語を使うんだよ!
日本人なら、堂々日本語を使えよな!」
……という、酔っ払ったおっさんがスナックの看板に絡む場面くらいしか思い浮かばなかった、今回のお題。
あなたといると安心する。
けど、あなたがいなくなるかもしれないという不安もある。
だから私は、少しずつ、あなたの周りを崩していく。
親も、友人も、上手く誘導して離れていった。
仕事も、生活も、私なしにはいられないように、徹底的に世話を焼く。
ほら、これであなたは私と離れられないでしょう?
逆光で顔がよく見えなかった、なんていう言い訳は通じないだろう。
覚悟を決めた一世一代の告白は、顔見知りの全く違う女性にしてしまった。
「えっと……よろしくお願いします」
狼狽える僕に、彼女は戸惑いながらも返事をする。
しかも、どうやら了承のようだ。
僕は告白が成功したことに喜べばいいのか、好きでもない女性と付き合うことに嘆けばいいのか、わからなかった。
これが今の妻との馴れ初めである。
ちなみに、妻には内緒だ。
こんな夢を見た。
夢の中で20歳の私は、2回目の高校生となっていた。
周りはもちろん、年下。同い年の者はいない。
そんな浮いている中、私は大学受験に頭を悩ませていた。
当日になり、寝坊して遅刻しかけ、新幹線の中を全力で自転車で走り、なんとか着いたと思ったら、試験会場を間違えるのだった。
そんな夢だった。
そして現在、目の前の目覚まし時計は午前8時5分前を指している。
仕事の始業時間は午前8時。
……これも夢であって欲しい。